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青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (前編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語

田中康夫先生友人・田牧康夫(画面右。弟君と)
ひみつのアッコちゃんと松竹梅
昭和42年10月1日、日曜日、円谷プロダクション空想特撮シリーズ第3弾としてTV放映されたウルトラセブンの放送当日の新聞TV欄を確認するに『笑点』を含む演芸番組、噺家を主軸とした芸能番組が「談志専科」立川流家元の短編を入れて、朝昼晩実に12本!!放送されておりました。
その頃、子供たちにとって世の中心は空前の怪獣ブーム。怪獣ごっこに明け暮れる男子と、ママレンジやリリアン、漫画としか呼ばれていなかったアニメーションのテレビ番組に、拙の出生いたしました東京新宿は――お父さんの上落合 マグロの中落合 男と女の下落合――隣町、下落合在住の先生・赤塚不二夫さん原作による『ひみつのアッコちゃん』がございました。
女子も男子も両者が“見てもいい番組”。主人公のアッコちゃん小学5年生の、町内で年下の男の子にガンモといふ和服で落語家然とした少年がおりまして、シリーズの中で噺家に入門する「巻」がござんした。
第23話、「落語がすきすき」。入門をお願いする師匠の心に届くように『松竹梅』の一節「なったァ、なったァ、ジャになったァ。当家の婿殿、蛇になったァ。何ジャにィなあられた。何ジャにィなあられた……」と唱え続ける話が、教材として拙の氣憶に入り込み、頻繁に見ていた演芸大喜利番組と合わせて考えるに「そうか。落語家ってぇのは、馬鹿な咄をして笑って過ごしているから、修行を厳しくしなくっちゃいけないのだな」といふ理解は、この頃に成り立ってをりんした。
よって一番最初に知った古典落語は、小学校の学級図書から読んだ『寿限無』『饅頭こわい』『堀の内』、定番三作の前に『松竹梅』にござんした。
前座初年度に、当代(世間と我らを遮断法人)落語協会々長・柳家さん喬師匠より『松竹梅』を伝授、お稽古をつけていただきました。
当時は師匠・馬風の『会長への道』は、登場人物の権衝も一大絶頂期でしたが、優しく慇懃なさん喬師匠のお振る舞いの中にも「師匠(大師匠五代目柳家小さん)が会長で……兄弟子も会長ンなるかもしれない。しかしこけし。いずれはインサイドワークが匠な私が。。。」との観測は、不自然なく宿されていたように記憶しております。
人間国宝となられた五街道雲助師匠との間の――墨田区ヘビー級選手権戦――は、これより先も日本人による日本の伝統芸能、さらには落語に心を寄せてくださるお客様に墨田区・江東区の対立軸をも加味した奏乗効果となり……などと入り組んだ話は、どこかであらためさせていただきまして……。