2026年4月の最前線 【後編】 (聴講記:津の守講談会/講談『太閤記』小考①)
「講談最前線」 第17回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/04/12
二ツ目に昇進した神田おりびあの高座
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。
聴講記:講談協会定席(2026年4月1日 四谷・津の守)
4月の定席は、「神田おりびあ 二ツ目昇進披露」を冠した番組構成であった。その初日の4月1日は、師匠の神田香織と、筆頭弟子である神田織音、おりびあにとっては兄弟子にあたる神田伊織と、「神田香織一門会」の装い。4月の〈前編〉で取り上げた講談協会の一般社団法人化の記者会見のあと、大入満員の客席が神田おりびあの船出と一門の今後の隆盛を祝った。
13:00 神田はるまき「島田虎之助」
13:05 神田山兎「三方ヶ原軍記」
13:10 宝井優星「千葉周作 幼年時代」
直前まで記者会見があったため、いつものように開演時間前から前座が上がることができず、この日は一人5分の高座。寄席は勉強の場でもあるから、時間が削られても上がれる人は高座に上がった方がいいのか。それともこういう日は、高座を務める人数を減らして、持ち時間を増やして上げた方がいいのか。三人ともしっかりとした読み口であるだけに、少なくとも10分は読ませてあげたかったと感じさせる高座であった。
13:15 神田おりびあ「真田幸村 大坂入城(真田の入城)」
父昌幸が亡くなった後、1614年(慶長19年)11月19日に大坂冬の陣が起こると、豊臣秀頼に加勢するために真田幸村は穴山小助ら家来を連れ、猿飛佐助のあげた狼煙を合図に難攻不落の大坂城に乗り込んでいく。
個人的な振り返りになるが、おりびあは前座修業中、自分の進むべき道選びに悩んでいた時があった。その時に先輩たちが挑む、講談の中軸にある軍談・修羅場の素晴らしさと、それが読めてこその講釈師であることに気付き、宝井琴梅・琴凌の師弟をはじめとした先輩方に教えを乞い、『三方ヶ原軍記』や『甲越軍記』といった古典軍談ばかりでなく、『擬音合戦』や『黴合戦』といった自作の修羅場にも積極的に挑み研鑽を重ねてきた。その成果は、講釈師にとって必要な「読み口」や「度胸」といったものに繋がってきた。
この日もこれまで習得してきた、声を張り、押しの強い、聴きごたえのある修羅場読みを披露。時にまだぎこちない点はあるも、ケレン(笑い)を取り混ぜた堂々とした高座で魅せただけに、これからの活躍に改めて期待。
13:37 神田伊織「奉行と検校」
中山道の大宮宿で出会った、眼の不自由な辰之助と芳太郎。二人は江戸へ出て、お互いに出世比べをしようと別れ、その30年後に辰之助は国学者・塙保己一として、芳太郎は南町奉行根岸肥後守として再会する出世物語。
お祝いの席では縁起物の話が読まれることが多いが、明朗明晰な講談の解釈と、難解な展開があれば独自の簡略化したコードで紡ぎ上げていく兄弟子・神田伊織からのご祝儀高座。
14:06 中入り
14:21 神田織音「赤穂義士銘々伝~横川勘平」
妹弟子のおりびあは左党であるが、この話の主人公である横川勘平は真面目一辺倒で、しかも大願成就があるからと「飲む・打つ・買う」の三道楽とは無縁。養父となる芹沢助右衛門は勘平を正式な跡継ぎにしようとするが、それでは勘平は討ち入りに参加することができない。そこで愛想尽かしの行動に出るが……。
結局、勘平は自分の道を信じ、吉良邸へ討ち入りを果たすが、そこに見えてくる「一念岩をも通す」というテーマは、姉弟子から妹弟子へのエールであったか。こういう半ば硬い話であれば、話の雰囲気を伝え得る硬い読みで聴かせるも、どこか人間臭い部分をフッと力を抜くように滑稽に描くことのできる、話功者神田織音、得意の一席。
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