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たいこ腹、粗忽長屋、甲府い

林家はな平の「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第2回

四席目 『たいこ腹』 ☆

■あらすじ

 お金と時間が有り余る若旦那。退屈だからと、鍼医(はりい)がやる鍼をやろうと思いつく。襖や畳に打ったり、果てには猫にも打ったり、だけど面白くない。人間に打ちたいと考え、なんでも言うことを聞いてくれる幇間の一八(いっぱち)をお馴染みのお茶屋に呼び出す。

 実験台にされる一八のお腹に鍼を打つ若旦那。一八が痛くて悶絶すると、鍼が折れてしまい、若旦那は「迎え鍼を打つ」と言い、また鍼を打つ。しかしそれも折れてしまい、怖くなった若旦那は逃げ出してしまうが……。

■オチ

 真っ青な顔の一八のところへ、お茶屋の女将が来て事情を聞く。

女将「素人に鍼は打たすもんじゃないよ。だけど、お前もこの辺じゃあ、ちっとは鳴らした幇間(たいこ)だよ。いくらかにはなったんだろ?」
一八「いいえ、皮が破れて鳴りませんでした」

■解説

 「太鼓持ち」「幇間持ち」は、両方ともに「たいこもち」、幇間は「ほうかん」と読むが、意味はどれも同じである。決して逆らわず、常に下に入って、お客さんから祝儀をもらう芸人のことだ。

 お腹に鍼を打たれて大ピンチを迎えているにも関わらず、洒落を言ってしまうところが幇間の性(さが)。☆1つの噺だが、オチの納得度が高いのは、苦し紛れに発するひと言だからかもしれない。どんな状況でも愛嬌で乗り切る幇間は、落語の愛すべきキャラクターの一人である。

 この噺は、リアルにやり過ぎると途端にウケなくなる。お腹に鍼を打つという、いわば拷問のような場面をいかにバカバカしく描くかが鍵となる。鍼を打つ若旦那も、打たれる一八も可愛く描かないと笑えない。

 テレビでやるリアクション芸が面白いのと近いのかもしれない。まさにダチョウ倶楽部の世界だ。だけど、素人が鍼を身体に打つ行為はやはり恐ろしい。良い子は絶対に真似しないでほしい。