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チンドン屋人生
港家小そめの「コソメキネマ」 第2回
- 連載
- 浪曲
驚きの…
五朗八親方はジィーとこっちを見ていて、ほとんど喋らず、怒ってるようにも見え、怖いし、こちらもチンドン屋に関してのなんの知識もない若造で、たいして話も弾まず盛り上がらないまま、お暇をして帰ろうとしたその時、
「じゃ、今日から弟子だな」
という一言が、五朗八親方から発せられました。ええっ! この盛り上がらない流れで、弟子!? うそーん! ちょっと面白そうなバイトくらいのつもりで、やってきた私には衝撃的な展開でした。
後に発覚したことですが、五朗八親方は若い女の子(当時)が来たので、格好をつけていたため、口数が少なかっただけで、怒っていた訳ではなかったようでした。
こうして、流されるまま、目眩くチンドン屋の世界に足を踏み入れることになりました。私が入った時は、五朗八親方もそうですが、家業がチンドン屋で、生まれた時からチンドン屋という生粋のチンドン屋がギリギリ残っていた時代でした。
当時は一番若い人でも40代後半くらい、60代から70代が多く、それまであまり接したことのない上の世代と付き合うことになりました。やっている人の数も大変少なく、皆若い頃からの付き合いで、全員顔見知り。他人だけど親戚のような。
若い人はほとんどいなかったので、なんで若くて仕事も沢山あるのにチンドン屋になんかなるんだ、わたしらは好きでやってる訳じゃないというようなことも結構言われました。そう言いながら、チンドン屋という商売が嫌いではないように見えました。
あまり褒められることがない商売、今よりもっと厳しい時代を経験していたので、好きも嫌いも入り混じる複雑な思いがあったのかと思います。