チンドン屋人生
「コソメキネマ」 第二回
- 浪曲
港家 小そめ
2025/06/12
私の青空
なんの覚悟もなく、何者でもない私は、そういう人たちの中でジタバタ右往左往するばかりでしたが、それでも仲間として受け入れてもらい、一緒に太鼓を叩き、町を周り、旅をし、ご飯を食べ、休憩した神社や公園で色々な話を聞き、怒られたり、バカバカしい話で笑ったりしながら過ごした日々は思い返すと、とても楽しく、面白かった。私の中の核みたいなものはそこで培われた気がします。
私の中に残るチンドンというものは、明るく晴れた良い天気なのに何だか泣けてくる、そんなものです。
時が経ち、親方たちがいなくなり、その太鼓の音も消え、親方たちのようにはなれないのは重々わかりつつも、忘れられず、ジレンマと寂しさを抱え、きれいごとと忖度の多い世界に居心地の悪さを感じていた頃、木馬亭の客席で再び本物に出会うことになるのですが……、これはまた別の機会に。
チンドン屋が街の音として出てくる映画は割とあり、チンドン屋の音が日常に流れている時代があったんだなぁと思います。特に成瀬巳喜男監督作品では、監督が好きだったのか、頻繁にチンドン屋のシーンが出てきます。
その中で多分、チンドンの音がスクリーンで最初に流れた作品ではないかと思われるのが、日本初のトーキー映画、1931年(昭和6年)に公開された五所平之助監督の『マダムと女房』です。
初のトーキーだったためか、他にもジャズの演奏や口笛の音や猫の鳴き声や子供の声、ミシンの音、様々な音が流れてきます。主人公が静かな環境を求める劇作家というのも洒落がきいています。
映画の冒頭、チンドンの音から始まります。印象に残る音をということで選ばれたのでしょうか。
畑に囲まれた一本道をチンドン屋が、たった一人、太鼓を叩きながら歩いて行きます。何か口上のようなもの切りながら。誰かもわからぬその姿に、何とも親しい気持ちが湧いてきます。きっと空は青空です。
(文中、敬称略)

▼港家小そめ X
■今回の映画
マダムと女房
原作:北村小松
監督:五所平之助
脚色:北村小松
出演:渡辺篤、 田中絹代、伊達里子、井上雪子 ほか
公開:1931年(昭和6年) / 上映時間:56分 / 日本
▼松竹株式会社 作品データベース
※久しぶりにチンドンをたっぷり演奏する会を開催します。
楽士とは、チンドン屋でメロディ楽器を担当する人のことです。

(クリックすると拡大します)
或る楽士のチンドン屋人生
2025年6月26日(木)
開場18時半・開演19時
アートスペース兜座 6階スタジオ
出演・楽士 堀田博喜(アルトサックス)
菊地麻子/港家小そめ(チンドン太鼓)
木戸銭・予約2500円 当日3000円
ご予約・お問い合わせ
ten5560@gmail.com
(毎月23日頃、配信予定)
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