つくまとさわぎとクリスマス・キャロル
「二藍の文箱」 第7回
- 落語
三遊亭 司
2025/12/02
初席で静かに静かに流れる『つくま』(版画:ひびのさなこ)
出囃子『つくま』
小朝兄さんが――。
最初の師匠、四代目桂三木助にとって、春風亭小朝師匠は兄弟分というよりも本当の兄のような存在であったと思う。ことあるごとに、「小朝兄さんが」と師匠三木助はそう口にしていた。
それほど師匠にとっては大きな存在であったし、逆もまたそうであったはずだ。わたしも遠くから小朝師匠の活躍を拝見しながら、三木助がいたならこの状況がまたどう変わっていたのだろうか、と、つい思いをめぐらせてしまう。
2002年(平成14年)のこと。師匠三遊亭歌司に言葉通り拾ってもらい、先師三木助が亡くなってからはじめての初席三日目。寄席で三味線を弾く下座のお師匠さんのところに「小朝師匠、『つくま』で上がられます」と、タテ前座が伝えにきた。
初席三日目は四代目三木助の命日で、『つくま』は三代目四代目、そして現在の五代目桂三木助が使っている出囃子だ。師匠の葬送では下座のひろ師匠の三味線に、小朝師匠の兄弟子、春風亭一朝師匠の笛で寒空の下送られた。
「太鼓はキミが叩いて」
小朝師匠はそうとだけわたしに言った。
ご案内の通り、初席の高座は次から次へと出演者が目まぐるしい顔見世の興行で、お目当ての春風亭小朝とてトリでもなければ持ち時間は10分もない。
前の演者がサゲを言って頭を下げると、次の演者である小朝師匠の出囃子――本来の明るく華やかな『さわぎ』を弾くところだが、〆太鼓をきっかけに静かに静かに『つくま』が流れる。
正月の華やかな興行で、あらためて先師の不在を知った時であり、小朝師匠も弟のように可愛いがった盟友の不在を感じた瞬間であったと思う。もちろん、客にそのようなはなしをするわけでもなく、楽屋でそんなはなしをあらためてしたわけでもない。
直接伺ったはなしではないものを、自分に都合のいい憶測で、「だろう」「だと思う」と書くことは、こうして私事といえどもすまいと思っているが、ことあるごとに、小朝師匠は誰かひとり生き返らせることができるなら「三木助さん」と仰っているから、ここは推して知るべしとお赦しいただきたい。
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