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チンドン屋人生
港家小そめの「コソメキネマ」 第2回
- 連載
- 浪曲
そして、チンドン屋に
チンドン屋の人たちは経歴も様々で、家業や好きで、この職業を選んだ人、旅役者をやっていた人、少女楽団で大陸をまわっていた人、ハコバンで楽器を演奏していた人、何をやっていたのかわからない人など色々な人がいました。
皆、大変個性が強く、よく喋るし、気性も激しく野蛮。歳を取っていても、全然枯れていない。いや、むしろ、そこいら辺の若者よりよっぽどパンク。物凄く魅力的な人たちでした。
もしチンドン屋にならなかったら、絶対体験しなかっただろうと思うことが沢山起こりました。理不尽だし、やっかいだし、シンドイ思いも山のようにしましたが、何だか正直な人たちでした。本物の凄みと怖さがありました。
なにより太鼓が、演奏が、最高に格好良かった。親方たちに言われたのは「山が見えるような太鼓を叩け」というもので、親方たちの太鼓は、本当に風景が見えるようでした。親方たちのチンドンはウキウキするような、お祭りのような、でも寂しさや暗さも内包していたような気がします。
チンドンは、誰か特定の人に聞かせるための演奏ではないですが、聞くともなしに聞いている人の気持ちにそっと入り込んでしまうようなものではないかと思います。

右端が弟子入り直後の若侍小そめ