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浪曲進化論

東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第2回

浪曲のDNAを未来へ

 先月5月8日は、師匠・二代目東家浦太郎の命日でした。もう亡くなって3年経ちます。師匠は芸の上手さは勿論ですが、わかりやすさや音楽性に特出し、時代に合った浪曲を常に目指し、挑戦し続けた浪曲師でした。先陣を切ってその時代の浪曲の最先端を作って来ました。

 芸のセンス抜群な師匠ですが、自分の芸を高める、「進化」するために、大変な努力をしたと思います。それは師匠の舞台の音源を聞けばわかります。しかし、芸人はその芸を全部持ったまま亡くなってしまいます。生の芸をまた観ることができません。これは非常に悲しい。

 でも、お客様や関係者の記憶に残っている。その人柄や想い出が胸に刻まれている。何かの時にその人のことが会話に出てくると温かい気持ちになります。

 また、師匠の浪曲への想い、やりきれなかったことが弟子の私にはわかります。それを繋いでいくのが弟子の使命。芸のDNA、浪曲の遺伝子を継ぎ、さらに受け継いでくれる弟子を一人でも育てる。なかなか難しい、大変なことですが、やっていきたいと思います。

 今月の浪曲定席で、客席後方から木馬亭の舞台を見て感じました。10年前も20年前も客席側から見る芸が、良い意味で変わっていないなぁと。継続できるというのは有り難いことです。

 「木馬亭は古い友だちみたいなもの」
 師匠が愛した浪曲定席は、今年55周年を迎えました。師匠が亡くなっても、木馬亭は続いていきます。

 浪曲で生存したい! 浪曲も生きねば。それは、まずお客様にいらしていただくところから始まりますッ。

(以上、敬称略)

(毎月15日頃、掲載予定)