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第一話 「危機感をあなたに」
令和らくご改造計画
- 落語

絵:大熊2号
#1
落語は、大丈夫だろうか。いつか廃れて、なくなってしまうのだろうか。
寄席の楽屋を見渡すと、前座さんたちがせっせと働いている姿が目に入る。
噺家に入門してから数年の間、前座さんはいわゆる修業期間として365日休みなく「高座返し」「太鼓」「着付け」「お茶出し」などの裏方に徹し、演芸界を少しでも盛り上げようと、落語の未来を信じて黙々と働いてくれている。
そんな彼らに、我々は今の演芸界について、果たして胸を張れるのだろうか?
いや──解決しなければならない課題は、山ほどある。
第一話 「危機感をあなたに」
まず何よりの問題は、「競争率の低さ」だと常々思う。
お笑いや音楽など、他のジャンルと比べて、プレーヤーの数が圧倒的に少ない。
それでいて、歌舞伎のような全体への厳格な教育もない。結果、「国宝級」と呼べる芸を持つ噺家がいる一方で、芸は正直ひどいけど、なぜか仕事はある──そんな噺家もたくさん存在する。
「ホール落語会」「学校寄席」「お寺」「地域寄席」「余興」「社内イベント」など、大小はあれど全国から届くナン万件という案件を、数百人の噺家で回しているのが現状。つまり人数の少なさゆえに、案外と仕事にはありつけてしまうのだ。
僕のような若手にとってはありがたい話であるけれども、落語という文化全体で見ると話は別だ。ウケない芸人が“食えてしまう”状況では、「こんなもんでいいか」となりかねない。そんな「底上げ」ならぬ「底下げ」が起きてしまう。
──要するに、どの業界にもあってしかるべき、「競争による危機感」が、落語には枯渇しているのではないか。