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2025年9月のつれづれ(富士実子、広沢美舟、国本はる乃、玉川奈々福、それぞれの躍動)

杉江松恋の月刊「浪曲つれづれ」 第5回

広沢美舟の節目、国本はる乃の20代最後の挑戦

 というわけで8月の気になった浪曲会の話題であった。この他、真山隼人が大阪万博の会場でアルステッド・リンドグレーン原作「長くつしたのピッピ」を浪曲にして読むという会が30日に行われるのだが、〆切の都合で残念ながら今回は間に合わない。機会があれば後日観覧記をご報告したいと思う。

 8月には広沢美舟が入門10周年を迎えたことを記念する「拝みます 拝みます おかげさまです!」の会が東京都江東区のティアラこうとうで11日に開催された。浪曲師ではなく、曲師のこうした節目を祝う会というのは珍しい。

 前講の三門綾から広沢菊春、港家小ゆき、木村勝千代と、自身とかかわりのある浪曲師をすべて美舟が弾くという会で、トリだった玉川奈々福が急病のため休演するというトラブルがあったものの、満員のお客さんが詰めかけてよい会となった。別の場所で詳しくレポートしたので、ここでは省略する。

 9月の浪曲では、国本はる乃に注目したい。はる乃が故・国本晴美に弟子入りしてプロになったのは2013年(平成25年)のことだが、それ以前の2005年(平成17年)、9歳の時から指導を受け、公演にも出演していた。

 1996年(平成8年)生まれなので、来年には30歳になる。その節目を前に2025年(令和7年)には「国本はる乃初挑戦20代最期のあがき」と題して、木馬亭公演のある各月の第一週を除く、毎月曜日に自作の新作浪曲をネタおろしするという企画に挑戦しているのである。

 全40回、舞台は田原町の日本浪曲協会会館一階の大広間だ。9月も8、15、22、29の四日間に18時半開演で行われる。折り返し点を過ぎてしまったので、気になる人はそろそろ行かないと間に合わなくなってしまう。毎回の木戸銭は2000円、前もっての予約が必要なので、ご注意を。

 その国本はる乃をずっと応援しているのが「赤坂で浪曲」だ。もともと赤坂で定期的に浪曲会を開いていたからこの名前なのだが、現在は会場閉鎖のため移動し、主に浅草木馬亭などで、主として若手から中堅に活躍の場を与える浪曲会を開いている。

 9月13日(土)は年季明け9周年を記念しての、国本はる乃独演会だ。浅草木馬亭において13時開演、前売2300円/当日2800円である。出演ははる乃の他に東家千春と若手人気の講談師・田辺いちか、曲師は沢村道代、沢村理緒が務める。

 なお、この日は同じ木馬亭で、午前中に玉川太福門下のわ太(わだい)・き太(きだい)の兄弟会も予定されている。10時30分開演でおのおの1席ずつ、曲師は玉川鈴である。