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2025年9月のつれづれ(富士実子、広沢美舟、国本はる乃、玉川奈々福、それぞれの躍動)

杉江松恋の月刊「浪曲つれづれ」 第5回

玉川奈々福の入門30周年記念と関西浪曲界の動き

 関東浪曲界では、9月20日に玉川奈々福が、福太郎への入門30周年を記念した会を開催する。「奈々福なないろ」と題した記念の会は、江東区亀戸文化センター内のカメリアホールで行われるのが通例で、この日の予告は、三遊亭白鳥原作の落語「鉄砲のお熊」を浪曲化するというもので、なんと女相撲を題材にした一席である。

 14時開演で木戸銭は前売3500円、当日4000円、三味線は広沢美舟。この会にはゲストとして落語芸術協会の重鎮・瀧川鯉昇が出演する。ただし落語ではなく、浪曲を実演するのだそうだ。三味線はもちろん、奈々福である。

 関西浪曲界の話題としては、京山幸枝若(きょうやまこうしわか)門下の幸太が、自身の入門記念日である9月8日に「浪曲こうた1/2」という会を新世界ZAZA Pocket´sで開催する。13時開演で木戸銭は前売2000円/当日3000円だ。

 タイトルだけ聞いてどういう会なのかと不思議に思っていたが、浪曲師の幸太が曲師にも挑戦するという趣向らしい。虹友美の三味線で2席口演して、京山幸乃を1席弾く。なるほど、だから「こうた1/2」なのか。東京に住んでいて大阪はそうたびたび行けないが、京山幸太の冒険はいつも遠くから頼もしく見守っている。

 おしまいにちょっとだけ宣伝を。先日、天中軒すみれ・広沢美舟コンビによる「夢枕獏原作 浪曲陰陽師 -琵琶玄象-」のネタおろしを小田原市三の丸ホールで披露した。その際ご縁ができて、同じく小田原市の平井書店が9月28日(日)14時から、浪曲をテーマにしたブックトークイベントを開催してくださることになったのである。拙著『浪曲は蘇る』(原書房)などを題材に、いろいろお話しようかと思っている。

 入場料が1500円かかるがご心配なく、しろうとの慣れないトークだけではなく、天中軒すみれによる浪曲も一席聴いていただく予定である。曲師は沢村理緒。相模国ゆかりの浪曲を仕込んでいただいているのでそちらもご期待を。定員25人とのことなので、ご予約推奨です。

(以上、敬称略)

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  • 書名 : 浪曲は蘇る
  • 副題 : 玉川福太郎と伝統話芸の栄枯盛衰
  • 著者 : 杉江松恋
  • 出版社 : 原書房
  • 書店発売日 : 2022年1月
  • ISBN : 9784562071456
  • 判型・ページ数 : 四六判・320ページ
  • 定価 : 2,200円(本体2,000円+税10%)

(毎月9日頃、掲載予定)