伝統を纏い、革新を語る 神田陽子(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第13回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/09/28
インタビュー中の一枚(筆者・撮影)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(神田陽子先生の前編/中編/後編のうちの中編)
師匠への想い
―― 山陽師匠はどんな方でしたか。
陽子 うちの師匠は1ミリも人間的に嫌なところがない、善の人だなと改めて思っています。それにダンディで、いつも穏やかで、自分のことを差し置いても、私たちのことをよろしくってお願いをしてくれる。稽古に関しても、「とにかくそっくりにやりなさい。模倣だ」って、だから「師匠にそっくりだ」と言われたこともありました。でも、師匠とそっくりで何が悪いんだと思っていました。師匠も「個性は自然に出てくるから、ともかく型をきちんと。高低をつける、緩急をつける、畳み込み、歌い調子を」と、とにかく徹底して教えていただきました。
私は早稲田大学へ入学して音声研究のゼミへ入ったので、講談の熟達者として師匠のテープを起こしたことで、熟達者と初学者の音声の比較ができたんです。それまで講談の音声に関する研究はなかったので、それができたのは良かったなと思います。
―― 山陽先生の弟子になって良かったと思いますか。
陽子 本当に、心から良かったと思っています。今も会いたいもん。
―― お会いできたら、お話ししたいことはありますか。
陽子 あります。松鯉兄さんが人間国宝になって、伯山さんの活躍があって、今の講談界の隆盛を見せたいですね。
――山陽先生の中で好きな演目はなんですか。
陽子 寄席で演じる『海賊退治』とか、連続物の『徳川天一坊』が好きでした。『青龍刀権次』も好きだったんですが、私たちには女だからって、『女天一坊』とか『安政三組盃』とかを教えていただきました。他にも師匠は『中江兆民(なかえちょうみん)』とか、それこそ『レ・ミゼラブル』とか幅広かったですよね。
幻の講談でキリスト教の話なんですけど、『ミサプールへの道』というのがあって、NHKの放送だったんですが、大先輩方との競演で、とにかく稽古をして臨んだら褒められたと言ってましたが、それを聞いてみたいですね。
ここで陽子が指摘する『ミサプールへの道』は、原作者はタイの元経済大臣であったプラ・サラサスによる作品で(長沼弘毅 ・翻訳)、発表された1950年(昭和25年)にNHKで連続講談として、音楽入りで四部作で読まれている。
出演者と読み物は、一龍斎貞丈「発端編~カルカッタの嵐」、神田小伯山(山陽)「奇遇編~想い出の円舞曲」、一龍斎貞山「愛欲編~燃ゆる紅花」、宝井馬琴「解決編~嘆きの王女」と、回教の国ミサプールでの悲恋を描いた物語である。
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