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10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑

「エッセイ的な何か」 第5回

10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑

「……絞ったら食えるかな……」(画:三笑亭夢丸)

三笑亭 夢丸

執筆者

三笑亭 夢丸

執筆者プロフィール

『ドッグ』と呼ばれた男

 10月9日は、『アメリカンドッグの日』だそうな。

 今回のテーマは、もうこの日に即決。……と言っても、「あの根元のカリカリを歯でこそげ取るのが美味しいよね」とか、「実は中が魚肉ソーセージの方が好み」だとかをとうとうと申し上げるつもりもなく、今回はとある先輩のことを書かせていただきたい。

 柳家小蝠(やなぎやこふく)兄さん。

 なぜテーマがアメリカンドッグで、この人の話をし始めたかというと、とんでもなくアメリカンドッグが好きだからである。

左から筆者、桂富丸師匠、小蝠兄さん
(2018年1月1日撮影、提供・三笑亭夢丸)

 僕が荒川区の町屋に住んでいた頃、この兄さんは田端に住んでいて、移動時間は自転車でだいたい十数分。それゆえに、事あるごとに兄さんの家に呼び出される。大した目的はない。「ファミコンしようぜ!」とか「『美味しんぼ』の再放送見ようぜ!」とか、もう小学生みたいな理由。

 ……まあ、小学生は家に集まって『美味しんぼ』の再放送なんて見ないか。

 そこでダラダラ過ごしつつ、だいたい近所のコンビニに行き、二人で買い出しをするのだが、その時に必ずと言っていいほどアメリカンドッグを買うのだ。しかし、この日は兄さんが憤っていた。聞けば、最近いつ行ってもアメリカンドッグが売り切れているとのこと。

 「レジで太ったアルバイトがいて、そいつがいる時は絶対、売り切れている。きっとアイツが全部食べちゃってるんだ!」

 ……完全な言いがかりである。己の体型を棚に上げ、「あの太っちょめ!」と息巻いている。

 そんな話を聞きながらコンビニに入ると、レジカウンターに、恐らくあの人なのだろうなという人物が立っていた。そしてこちらを見るや否や、小声で隣のアルバイトに囁く。

 「……ドッグだ、ドッグ来たよ……」

 もう兄さんが毎日、血まなこでアメリカンドッグを探しているゆえに、知らぬ間に店員から『ドッグ』となどという、『太陽にほえろ!』における神田正輝チックなあだ名を付けられていたのだった。

 不本意だったのか、兄さんはそれ以来、その太ったアルバイトがいない時にこっそり買いに行くようになったらしい。アメリカンドッグを買う行為自体は、止められなかったようだ。

柳家小蝠師匠のX(2016年1月25日付)

https://x.com/y529/status/691275076176457728