自分らしく、まっすぐに 神田菫花(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第16回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/10/29
干瓢の置き物とともに。右は宝井琴鶴(神田菫花・提供)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。(神田菫花先生の前編/中編/後編のうちの中編)
会社員から講釈師へ
―― 順番は異なりますが、菫花さんが講釈師になったきっかけを教えてください。
菫花 会社員時代に初めて生の落語を聴きに行ったんです。お亡くなりになった三遊亭円丈師匠が開いていたプークでの新作落語の会です。その会に神田昌味(かんだまさみ)先生が出演されていて、それが初めての講談だったんですが、それまで講談は男の人がやるものだと思っていたんです。その昌味先生の講談が面白くて、講談に興味を持ちました。
その時に働いていた会社がまた、1日に12時間くらい働いて、土日もないような状況で、アフター5も楽しめなかったんです。そこでそれまでの自分にないものを習おうと、料理教室か講談教室に通ってみようと思って、お江戸上野広小路亭に電話をしたら、師匠のことを勧めてくれたんです。昌味先生とはその後、前座になって上野広小路亭でお会いして、「先生の講談を聴いて、この世界に入ったんです!」とご挨拶したら、喜んでいただいて、お年玉までもらいました(笑)。
新作落語の巨匠であった三遊亭円丈が開いていた会とは、菫花の入門前(2006年以前)と考えれば、「実験落語」(渋谷ジァンジァン)、「応用落語」(文芸坐ル・ピリエ)に続く、「落語21」(プーク人形劇場)のことだろう。神田昌味も数回、出演していて、菫花の聴いたのは『ケイタイメール』(2001年3月20日)、『ダイエット修羅場』(同年6月19日)、『整形修羅場』(同年8月11日)、『夫婦タンゴ』(同年11月20日)、『流水の子供たち』(2002年1月4日)、『お見合い修羅場』(同年10月8日)のどれかであろうか。ここに並ぶ演目を見るだけでも、面白そうな内容であることが伝わってくる。
―― 初高座は覚えていますか。
菫花 それがですね……、初めての高座は師匠の教室の発表会で『般若の面(はんにゃのめん)』をかけさせてもらったんだと思います。何せ、てんやわんやで覚えていません。定席では『三方ヶ原軍記(みかたがはらぐんき)』でした。

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