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国境を越えて

古今亭佑輔とメタバースの世界 第6回

日本人として

 自分はアメリカで2年過ごした経験がある。それ以前は日本人として、なんて考えたことは一度もなかった。

 生まれた時から周りにはほとんど日本人しかいなかったし、幸運なことに自分の文化や生活を脅かされることはなかった。

 いじめはあったかもしれないが、人種差別なんというものとは無縁であった。もちろん自分のアイデンティティを意識したこともないので、自国の文化に無頓着であった。もしくは知らないうちに文化に触れていた。そのルーツがどこから来るのかも知らずに。

 見渡せば本当に豊かな文化があったはずなのに、勿体ないことをしたと思う。

父親と幼少期の筆者

 アメリカで2年過ごしたのは大きかった。アメリカに行っていなければ、噺家にもなっていなかったかもしれない。外から見た日本は愛する故郷であり、その文化の豊かさを改めて知るきっかけとなった。

 そこで父の言っていた言葉の意味を考える。

 「日本人は海外に出るべきである。自国の文化を色濃く残している日本文化は、海外に受け入れられる」

 日本人だから海外に出るのではない。何かが優れていて、何かが劣っているということではない。しかし、自分の国の文化を誇りに思うのは、けして悪いことではないということだ。

 自分は日本文化を愛しているからこそ、それを多くの方に知ってもらうきっかけを作りたいと純粋に思う。

公演情報|古今亭佑輔 公式ウェブサイト

(毎月5日頃、掲載予定)