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着物

「座布団の片隅から」 第8回

ジェネリック兼好と呼ばれた日

・ドレスコードに幅広く対応できる

 もちろん着物にも『格』があって、TPOに応じた着こなしをしなければならないが、着物で行けばある程度はどこに行っても恥ずかしくない(例外はあります)。噺家の場合、寄席の出番からホール落語、さらにはホテルの営業や居酒屋の落語会まで色んな会場へ出向くことになる。いちいち考えなくても良い。

 ただし、一度、仕事でゴルフ場の会員用ホテルに宿泊させてもらったことがある。受付はもちろんゴルフ場のロビーで、さらにカート置き場を突っ切って部屋に向かわなければならなかった。その時ばかりは、浮きに浮いた。「日本に初めてゴルフを持ち込んだ人」みたいに見られてしまった。

・着物の捌きが良くなる

 これは噺家ならではの話になるが、高座での所作が綺麗になるらしい。仕草が自然と板についてくるそうだ。私自身では実感がないが、まぁ、そういうことなのだ!

・覚えてもらいやすい

 キャラがわかりやすくなる。「あぁ、あの着物の人ね」といった具合に人から覚えられやすい。ただし、着物生活を始めてしばらくは周りにイジられることもあるので覚悟が必要である。私もしばらく、あだ名が「着物」や「ジェネリック兼好」になった。ひどい!

師弟でツーショット

 他にも良かった点はたくさんあるが、着物生活で苦労する所ももちろん存在する。

・勘違いされやすい

 本業なのか趣味なのか、ハロウィンの仮装なのか分かりづらいので、よく間違えられる。私も一度、中津駅でコスプレイヤーの二人組に声をかけられて「素敵なコスプレですね! 中津にコスプレイヤーが三人も集まるなんて! 一緒に写真撮りましょう」と言われたことがあった。もちろんノリノリで撮った。

中津のコスプレイヤーと

・初期投資が大変

 最初に四季の着物を揃えるのに、多少お金がかかる。私の場合はお客様から着物を頂いたり、古着を買いつつ、毎年着物をこさえて時間をかけて乗り越えた。普段着は古着か化繊の着物にしておき、格の高い場所やオシャレしたい時に一張羅を着るのがオススメだ。

風の強い日はムササビみたいになる