講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第25回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/02/04
真打昇進後の高座。2022年9月(提供・田辺銀冶/撮影・ヤナガワゴーッ!)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈田辺銀冶(たなべぎんや)先生の前編/中編/後編のうちの中編〉
前編はこちら
名も香盤も捨てて
当人曰く、シャイな銀冶さん(笑)。何回か(も?)迎える人生の分岐点を前に、一度は講釈師の道から外れるも、自分探しの旅の目的地は、結局、講釈師にあったということだろうか。海外で解き放たれた自身と、その経験は講釈師人生にどんな影響を与えたのか。いわば“出戻り前座”時代について尋ねてみた。
―― 日本に帰ってきて、講談の道を再び選ぶ訳ですが、師匠はすんなりと受け入れてくれましたか。
銀冶 一鶴のところへ行って、「また講談をやりたいです」と伝えた時に、当然「いい」と言ってくれると思っていたら、なかなか「うん」と言ってくれませんでした。しばらくは師匠のカバン持ちをして、師匠が開いていた「東京ニューヨーク寄席」について回ったり、その時は「修羅場道場」は「講談教室」と名を変えていましたが、そのお手伝いをしたりしていました。
実はその頃、祖父の在宅介護が始まったばかりで、それが大変でモヤモヤしていたんです。2005年頃の話ですが、ちょうど、師匠が『妖怪軍談修羅場』を読んでいた時で、それを祖父の介護に置き換えて読んだんです。実質的な私の初の新作講談です。
それを師匠が聴いてくださって、「よし、はじめてお前の本気を見せてもらった。弟子として許す」と言って、「一龍斎貞水先生と本牧亭のおかみさんに挨拶に行こう」ということで、2006年11月に再入門となりました。
―― なかなか他の方からは聞けないような講釈師人生ですね。
銀冶 ところがまだ終わりません。今度は香盤をどうするかということになって、元の香盤に戻すかという話もあったんですが、私はそれは嫌だと。
確かに高校3年間、前座はやっていたけど、満足できるような修業はしていない。だから一から修業をし直したいと話したら、今度は私が最初に入門した時の後輩がやりづらい。それでも一番下に据えてもらって、当時のすずさん(現・神田菫花)と同月に前座となりました。
―― その時に、いわば心機一転ということで名前を変えられたんですね。「銀冶」という名前の由来はなんですか。
銀冶 あとになって思えば師匠の「一」か「鶴」をもらえばよかったんですよね、一鶴は自分で名前を考えろという人でしたから。すっかりその考えが抜けちゃって(笑)。それで姓名判断のできるお坊さんのところへ母に連れていかれ、「何か決まりはあるのか」「ありません。同じ名前でなければ」。
その時に自分でも考えていた名前があって、その中に「銀鼠(ぎんねず)」というのがあったんです。色も好きですし、字面(じづら)も好きだったんですが、芸名に「鼠」はちょっとなということで、「銀」に関係する文字として、「冶金(やきん)」の「冶」という、よりによって難しい字を付けてしまったんです。(※冶の左側は、にすい「冫」)
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