〈書評〉 現代落語論 (立川談志 著)
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第9回
- 落語
- Books
杉江 松恋
2026/01/30
六十年以上も読み継がれる名著
バイブルについて書く。
立川談志『現代落語論』は、三一新書より1965(昭和40)年11月に刊行され、現在まで版を重ねている。落語家が落語について書いた先行書としては、三代目三遊亭金馬『浮世断語』(現・河出文庫)があったが、内容の先進性から時代を経るごとに画期的な書と評されることが多くなった。
この2冊と談志の弟弟子、五代目柳家つばめが1972(昭和47)年に出した『創作落語論』(現・河出文庫)だけが「落語家の世界を本当にリアルに書いた本」だとしたのは、文庫化に際してエッセイを寄稿した談志の弟子、立川談之助である。
そうそう、文庫化されたのだ。『現代落語論』は、抜きん出たロングセラーとなったため、三一新書が絶対に手放すまいと思っていたのである。それが去る2025(令和7)年12月に中公文庫に入った。文庫化に際しては2002(平成14)年に談志が書いた「『現代落語論』、その後」、三一新書版の「まえがき」、師・五代目柳家小さんの推薦文も収録されている。
小さんの文は、三一新書の裏表紙を飾っていたもので、
「芸は人柄が出る。人格者になれといわない。丸みのある人間になれ、これが談志のこれからだ。まだまだ未完成の談志の書いた本。そのつもりで読んでもらったら幸いと思います。楽しく読めると思います」
という文章に弟子に対する情愛が滲み出ており、人柄が偲ばれる。
巻末には、直弟子によるリレーエッセイも付録として収録されていて、先ほど触れた談之助の文章は、そこから引いたものだ。自身にとってもバイブルであった、と書いている弟子が多いのが冒頭の一行の由縁である。
中には読まずに弟子入り志願し、「俺の本を読んでねえ奴が弟子入りに来やがった」と談志を呆れさせた立川龍志のような人もいるのだが、後に落語立川流が創設された際の方向性を定めることになった起点であるから、バイブルと称されることには意味がある。
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