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ふるい毛と かわを巻き込み はがす音

「朝橘目線」 第8回

一人で貼れる?

 そんな人たちに言いたい。

 鏡を見ながら、一人で湿布の保護フィルムから①と書かれたやつだけ外して、患部に置き、そこから②③と書かれた残りのフィルムをスムーズにはがせる? ピタッと美しく、湿布貼れる? 無理だろう。

 人間ってのは、手が二本しかないんだ。片手で湿布持って、①のところのペタペタを皮膚につけてから手を離すけど、やっぱり不安だから、結局片手でそこ抑えてもう片手で②と③引くんだろう? どうなる? 引かれたフィルムに湿布が持ってかれて、噛んだ後のガムみたいなやつがへばりついているだけだろう?

 悔しいか? 悔しいだろう! バンテリン塗り塗りのほうが良かったかと後悔するんだよ。でも、そっち選んだところで、ギリギリ届かないか、届いても先端のスポンジ部分が下向きじゃないから、液がジワッとしてくれなくて、そのうちに腕が疲れてあきらめることになるんだよ!

 結婚してなかったら、肩や背中、腰などに湿布をキレイに貼ることはできなかった。な? 隣に誰か一人、いてくれるだけで、救われるんだよ、人生ってやつは。

 「人という字は、互いに支え合って人となる」

 あの字のジョイント部分、そこをくっつけているのが、湿布なんだよ! 人生のパートナー選びというのは一生ものだから大変だけど、そもそも人は一人じゃ生きていけない。だから人間関係が円滑であるに越したことはない。

 してみると大阪の商人文化って、ものすごく優秀だ。町のおっちゃん、おばちゃんたちがあれほど卓越したコミュ力を有しているのは、歴史の積み重ねそのものだと思う。言葉一つ取っても、とにかく相手を不快にさせない気遣い、気持ちよく会話を進めるためのノウハウが満載だ。

 人情というものが薄れゆく現代社会こそ、大阪人の心意気に学ぶところが大きいのではないだろうか。知らんけど。