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ふるい毛と かわを巻き込み はがす音

「朝橘目線」 第8回

ありがとう

 その証拠に、「ボンボンドロップシール」という、かなり人気の商品が、ネットで見ると売り切れまくっている。

 妻が聞いたママ友さん情報だと、朝一番に買いに行かないと店舗でも入手できないとか。子どものために、親が本気を出さないといけない。ファンシーな世界観とは裏腹に、殺伐とした現実がそこにはある。

 娘がそれを願うなら、私は朝からサンリオショップにだって並ぶ。

ボンボンドロップシール(クリックするとサンスター文具のHPに移動します)

 足で稼ぐ、これは基本。だが人間は頭を使わなくてはいけない。こういうアイテムには、必ずご当地商品がある。仕事であちこち行く私は、むしろそういうレア物の入手でこそ、力を発揮できるはず。

 先日、故郷・沼津に仕事で行った。駅の改札を出てすぐ、ガチャガチャの機械が。「シール」の文言。そしてそこには「沼津限定」とある。回してみた。

沼津で見つけたシールガチャ

 戦利品、写真載せるのでご覧あれ。海産物加工品工場で、パートのおばちゃんたちが作業する机の上に無造作に置かれている物品にしか見えない。

ガチャで出たシールがこちら。
開けた時は目を疑った

 日本人としてのもったいない精神、それのみで娘に渡した。泣くか、怒るか、いつもの無視か。

 無垢な我が子は、清浄なるシール帳の真ん中に、それを貼ってくれた――。

 これを執筆している時点で、まだ娘はシールのトレード交渉をしていないが……いつかその時が来たら、こいつらはどうなるんだろう? 親としては心配だが、それよりも興味関心を抑えきれない。「沼津名産ひもの」シール欲しさに、ボンボンドロップをくれるお友だちがいたらどうしよう。娘のシール帳に、神のご加護を。

 もうこの年になると、そうした小物を愛でたり、集めたりもなく、私が貼るのはせいぜい湿布くらいだ。どうも腰が痛いし、妻に貼ってもらおう。向こうも肩が痛いとか言っていたから、湿布交換でもしよう。こんなことができるのも、妻がいるからこそだ。これでも一応、感謝はしている。

 あ……妻よ、ありがとう。
 言われたお題で、一本書けたわ。

三遊亭朝橘 公式ウェブサイト

https://choukitsu.com

(毎月8日頃、掲載予定)