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2025年12月の最前線【後編】 (2025年の講談界ニュース)

「講談最前線」 第13回

2025年12月の最前線【後編】 (2025年の講談界ニュース)

恒例の鈴本演芸場「琴調の夏」で主任を務める、講談協会会長 宝井琴調

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

 講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。(2025年12月の前編/後編のうちの後編)

2025年の講談界ニュース

 2025年も、残り二週間ちょっと。メディアでは、この一年を振り返るといった特集が組まれているように、この5月に開設された当Webの「講談最前線」でも、一年間の講談界の出来事を振り返ってみたい。とは言え、ベスト5やベスト10という順位をつけてのものではなく、この一年、講談界を追って来て、印象に残った出来事を挙げることにする。ただし、東京の講談界に偏ってしまう点はご容赦を。

1.定席やホール等での企画物の充実

 講談協会では、毎月1~3日に四谷・津の守講談会を開いているが、2025年は企画興行の充実ぶりが光った。5月には宝井琴梅、一龍斎貞花、一龍斎貞心といった大ベテランを主役に据えた「三人合わせて260歳」。7月の若手講釈師を中心とした「軍談ウィーク」と、11月の「お富与三郎連続公演」は当Webでも取り上げた。10月には2026年に真打に昇進する田辺いちかが、二ツ目にして定席でトリを務め、連日、大入満員。

「軍談道場」の面々。左から、仕掛け人の田辺銀冶、宝井琴鶴、神田伊織、一龍斎貞橘、宝井琴凌

 お江戸日本橋亭の閉場後、定席の一つは新宿永谷ホールに会場を移しているが、毎月、夜の公演は、協会員による企画の会が開かれている。「宝井琴星一門会」といった会のほかに、7月には「六代目小金井芦州 生誕百年祭」、12月には「田辺一鶴生誕100年」といった追善興行で先人の功績を偲ぶばかりでなく、8月には「軍談道場 スペシャル」といった、これまでの定席興行では見られなかった企画物で、多くの講談ファンを楽しませた。

 日本講談協会では、講談の裾野を広げ、新たな講談ファンを獲得しようと、「はじめての講談会」(深川江戸資料館小劇場)を開催。会長の神田紅、神田陽子、そして絶大な人気を誇る神田伯山らが出演し、講談に馴染みのない人、はじめての人向けの演題や、講談ファンが友人等を連れてきやすい演目を並べた会となっており、2026年の展開も楽しみにしたい。さらに神田山陽一門の講釈師の魅力を知ってもらうべく、2024年に続いて「日本講談協会フェス」(霞が関・イイノホール)を開催するなど、講談人気を確実なものにすべく、昨年以上に動いてみせた。

 また、定席ではないが、講釈師にゆかりの深い泉岳寺で、両協会の講釈師が出演して、原則、毎月開いている「泉岳寺講談会」が50回を迎えたのも特記しておきたい。