浪曲ほど素敵な商売はない

「浪曲案内 連続読み」 第8回

浪曲の未来を信じる理由

 浪曲三味線は、またほかの三味線音楽と違って特殊です。

 浪曲師とともに物語を表現していく。そして、あの「イヨーッ」「ハァーッ」という合いの手。現在は津軽三味線で使われる太棹(ふとざお)の三味線を使うことが多いですが、胴に張る皮は犬の皮。ちなみに東家美の三味線は現在、山羊(やぎ)の皮です。

 撥(バチ)を皮に当てますので、猫の皮ではなく、丈夫な皮を使います。太鼓のように打楽器の役割で、撥を持った右手でリズムを刻みながら、左手の指でメロディを奏でていきます。

 その三味線に合わせてボーカルがある。一つの長い物語を、節(歌のようなもの)と啖呵(セリフ)で語っていく。インストゥルメンタル(舌を噛みそうな言葉!)ではなく、歌と語りがあるというのは大きな特徴です。

 浪曲師と曲師、二人。ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4ピースバンドより少ない単純な形式です。いろいろな役割を果たす浪曲三味線があればこそ、成立します。

 そして何より、自由で現代的であるということ。浪曲はもっともっと進化できると思います。日本には浪曲という素晴らしい芸能がある。こんな素敵なものはない! 最近つくづくそう思います。

 「浪曲には若いお客が少ない」
 「木馬亭に行っても若い客がいないじゃないか」
 「大丈夫か? このままだと浪曲のお客はいなくなるぞ」

 と心配されるお客様がたまにいらっしゃいます。浪曲を愛してくださっているからこそのお言葉で、大変ありがたいです。たしかに仰る通りなのですが、「いいものは残る」いや「遺す」というのが、芸人としての実感です。

 演芸雑誌『東京かわら版』の1980年(昭和55年)7月8月号に「立川談志 浪曲を語る」という特集記事がありました。私の師匠、二代目東家浦太郎、当時の芸名は太田英夫と澤孝子師匠たち若手が、談志師匠と浪曲の未来について対談している内容です。

 ここで、師匠の太田英夫が、

 「私たちもどうしたら若い人たちに浪曲を注目してもらえるだろうか。いつも其の問題を考えています。(中略)内容とか、メロディとか、何とか工夫してと……」

 それに対して、談志師匠はこう応えます。

 「ウム、でね太田君、浪曲の三味線がネ、老若男女を通じてネ、日本人の心情に合わない訳がない、そうだろ日本人なら……浪曲の歌声が合わない訳はない、俺はそう思うし、もっていきようによって未来性があると信じているから、私もみんなとこういう話をしてるン」