祖母と娘と、変わらないホットケーキ

「かけはしのしゅんのはなし」 第8回

 そして、ホットケーキの絵本の代表格と言えるのが、『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)。5歳の娘も大好きで、寝る前とかによく読みます。

 この絵本には、料理の準備にとりかかるワクワク感、ホットケーキが少しずつ膨らんでいく様子を見守る楽しみ、出来上がりを誰かと一緒に食べる喜びが描かれています。そして、何より記憶に残る色彩と構図は、子どもだけでなく、大人も魅了します。

 ちなみに、絵本の中に手元が滑って卵を床に落として割っちゃう場面があるのですが、どうしてこの場面を書いたのだろうかと、読むたびに引っ掛かります。話の展開では必要ないと思うんです。それでも書かれているのには理由があるはずです。

 これは筆者の未来への思いなのかもしれない――。

 娘が大きくなってワンルームの一人暮らし。仕事から帰ってきて疲労困憊。小さなため息をついて、着ていたダウンコートを脱いでハンガーに掛ける。このままベッドに倒れ込みたいところではあるけれども、何か食べようと冷蔵庫を開く。

 6個入りのパックに残り1つの卵。これを使おうと卵を掴もうとすると、手元が滑って卵が床に落ちる。

 「どうして、こんなにうまくいかないんだろう」

 先ほどよりも大きなため息をついて、掃除しようとすると、

 「そういえば、小さい頃、お父さんが絵本を読んでくれたな……」

 床に割れて潰れた卵を見ながら、思わず涙を流してしまう社会人1年目。遠く離れた場所でも思い出される親子愛。

 そういった未来への繋がりを作るために必要な場面かもしれないです。