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〈書評〉 熟柿 (佐藤正午 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第8回

どんな時も子供の幸せのため

 さて、本題に移ろう。本だけに。

 今月の一冊は、『熟柿』(佐藤正午・著)

 変わり者で、親戚の中でも嫌われ者だった、晴子伯母さんの葬儀の日。かおりのおめでたが親戚中に知れ渡ったこともあり、ふるまいの席は葬儀の日の晩とは思えない盛り上がりを見せる。その喧騒から一転して、息が詰まるような物語が静かに幕を開ける。

 『普通の人』が、ある日を境に突然、犯罪者=『悪人』となる。加害者側の物語なので、読み進めるとどうしてもそちら側に同情してしまうが、誰の身にも起きる可能性のある出来事で、決して遠い世界の話ではない。

 道を違えた母子の物語。親はどんな状況に陥っても、子供の幸せを一番に望む。先回りして、子供が幸せになる道を選ぼうとする。このほうがきっと良いと決めてかかる。

 お節介な親心で、息子が望まない水族館に連れて行くように……。

 熟柿(じゅくし)―― 熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時期が来るのを待つこと。ただ待つだけでは意味がないだろうが、積み重ねた想いや苦労は、必ず報われる日が来ると信じている。親子の関係だけではなく、すべてにおいてそうであってほしい。「熟柿」、良い言葉だ。

 私の芸人としての人生にも熟柿の時が来ることを信じている。その時の全国ツアーのタイトルは『熟柿』にしようか。そして、ツアーグッズは『熟した柿』。きっと忘れられないツアーになるだろう。

 ちなみに大洗水族館のイルカショーは、今まで観てきたイルカショーの中で一番凄かった。レジャーシートを持参し、最前列で観ることをおすすめしたい。大盛り上がり必至。最高の水族館だった。

笑福亭茶光 X

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  • 書名 : 熟柿
  • 著者 : 佐藤正午
  • 出版社 : KADOKAWA
  • 書店発売日 : 2025年3月
  • ISBN : 9784041146590
  • 判型・ページ数 : 四六判・368ページ
  • 定価 : 2,035円(本体1,850円+税10%)

(毎月1日頃、掲載予定)

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