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2026年2月の最前線(聴講記:講談協会「初席」、日本講談協会「講談広小路亭」/2月と3月の注目の公演)

「講談最前線」 第14回

2026年2月の最前線(聴講記:講談協会「初席」、日本講談協会「講談広小路亭」/2月と3月の注目の公演)

講談協会「初席」にて。今年真打に昇進する田辺いちか(右)と、妹弟子の田辺一記

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

 講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。

聴講記:講談協会「初席」、日本講談協会「講談広小路亭」

 寄席の世界ではその年の最初の興行を「初席」と呼び、1月いっぱいを正月興行として祝う。コロナ禍による自粛ムードも一掃され、寄席にも多くの観客が戻ってきた感もある中、講談協会と日本講談協会がどんなスタートを切ったのか。両協会の正月興行を覗いてみた。

 普段の興行とはちょっと趣きが異なり、「おめでとうございます!」「本年もよろしくお願いいたします」といった挨拶から、一年の計となるべき縁起の良い話が並んだりと、それがまた正月興行の面白いところでもある。そんな高座の様子を短評とともにご報告(なお、客席で合間に取ったメモを基本に、適宜、追記を行った)。

講談協会「初席」・夜の部(1月5日 深川江戸資料館)

15:50 神田山兎 「三方ヶ原軍記」

 内藤三左衛門の物見の前まで。強く元気があり、話を前に押し出す高座。修羅場と地の読み分けがこれからの課題か。

16:00 田辺いちか 「安政三組盃 ~間抜けの泥棒」

 この日のスポーツ紙に大きな記事が出たという喜びのマクラから。二ツ目としての初席はこれで最後(秋に真打昇進予定)。言葉が明瞭で丁寧。真面目に読むからこそ、かえって登場人物のドジが映える。中性的な読みもまた魅力。

16:20 宝井琴凌 「加賀騒動 ~服部と稲垣の武士気質」

 稲垣半兵衛が犬猿の仲である服部瀬左衛門の家に娘を嫁がせることになり、それを機に二人が親友に転じるという、武士の、今から見れば堅苦しい意地の世界とその滑稽さを、修羅場で鍛えた硬い読みと、世話物で鍛えた軟らかい読みで聴かせる。

16:36 神田すみれ 「夕立勘五郎 ~元松の改心」

 勘五郎が妹分の小判のお蝶を連れて身延山へ。その途中、勝沼の旅籠で部屋に忍び込んでくる者がいたので捕えてみると、それはかつてお蝶の子分になりたいと言ってきた元松という男であった。軟らかい読みの女性講釈師が侠客伝をどう読むかのお手本。「夕立勘五郎」自体、最近あまり多く聴かないので、前後を含めて、連続で聴きたい。

17:05 仲入り

17:15 富くじ

 黒田節を唄いながら、日本号ならぬ突富の槍を持った琴凌が、いちかを率いて舞台に登場。商品は色紙やカレンダーなど。珍しく田辺一乃制作の馬の飾り物が当たり、小躍り。

17:32 田辺銀冶 「一鶴とレディ・ガガ」

 華やかさの裏に浮かび上がってくるペイソスをも描き出す。一鶴とガガという異世界?の人物がどう出会い、交流していくのか。銀冶本人がいたって真面目に読み進めるからこそ面白い。詳細は、2月3日配信の「講談界を駆ける一鶴イズムの継承者 田辺銀冶(前編)」を参照のこと。

17:56 田辺一邑 「太閤記 ~長短槍試合」

 今川義元上洛に備えて、織田信長がどう対策を取るのか。そのあたりの説明が丁寧であるからこそ、豊臣秀吉の奇策がまた話で映えてくる。話の骨格をつかんでの相変わらずの確かで丁寧な高座が魅力。この日の聞きもの。

18:21 宝井琴梅 「名工浜野矩随」

 三が日の浅草寺の賑わいとお賽銭の額といった、琴梅先生らしいフワッとしたマクラから本題へ。最初はマクラの余韻のような表現の怪しさがあるも、物語が進めばその世界に没入。不甲斐ない息子(後の二代目矩随)を思い、叱咤激励する母親と、来るもの拒まずだった伊勢屋の旦那が、酒の上とはいえ、一旦、矩随を突き放す様子を、凛とした読みで話を活かす。母は生きて仏壇の前で拝んでおり、いざ短刀で喉をという時に矩随帰宅という設定。二代目浜野矩随の出世談。

18:59 出演者全員による三本締め

19:01 終演

 「相手の懐を取り込む」という意味合いから縁起がいいとされる泥棒の話に、縁談物に出世譚と、正月らしいゲンを担いだ話が並んだ。2026年の講談協会の初席は、四谷・津の守(1日~4日昼)、木馬亭(元日夜)、神田連雀亭(2日~4日夜)、深川江戸資料館(5日~6日昼夜)と4会場計12公演の開催。深川の会では昨年に続き、昼の部に余興(踊り等)が披露され、各回では「富くじ」と題した抽選会も行われた。

 今年の講談協会については、この日に取材をした1月の「講談最前線」のインタビュー、「宝井琴調・講談協会会長 年頭のご挨拶」を参照のこと。