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2026年3月のつれづれ(玉川太福の受賞、玉川奈々福の徹底天保水滸伝、『深夜食堂』&『陰陽師』の浪曲化)

月刊「浪曲つれづれ」 第11回

 この日の第2回では、「ボロ忠売り出す」を前席で口演した。これは天保水滸伝としては外伝で、「笹川の花会」にも顔を出す仙台丸屋の忠吉が若いころの冒険譚である。笑いの多い話で、客席が沸きに沸く。これを前段に持ってきたのは口演し慣れていることもあるだろうが、奈々福にとっては決して楽に覚えた外題ではない。講談の神田愛山に教わるにあたり、まず講談で一席を覚えて許可を貰い、それを浪曲に直した苦労の一席なのである。

 休憩のあと、黒紋付に着替えた奈々福が登場する。いつになく緊張しているように見える面持ちで「利根の川風袂に入れて」と外題付を始めた。このネタは節もそうだが、飯岡の助五郎一の子分である洲崎の政吉をはじめとする侠客たちの啖呵が聴かせどころである。二代目勝太郎の音源を聞くと、あの渋い声だからこその凄みがある。奈々福はさすがの迫力で、この一席を唸り切った。良い「笹川の花会」であったと思う。自分が師匠・玉川福太郎の衣鉢(いはつ)を継いでいく者であるという覚悟が見えた舞台であった。

「徹底天保水滸伝」はあと2回続くが、奈々福は別の大一番が5月には控えている。5月22日(金)・23日(土)の両日、東京・銀座の観世能楽堂において「奈々福、独演。銀座でうなる、銀座がうなる」の第7回が開かれるのである。

 両日のゲストは22日が僧侶で宗教学者の釈徹宗、23日が木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一、初日には三遊亭白鳥原作の「鉄砲のお熊」、二日目には能「海士」を元に木ノ下が書いた「珠取海女」をかける。能楽堂での浪曲、いいものである。ぜひお運びを。