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第八話 「酔っ払いにSNS」

「令和らくご改造計画」

#5

 しばらく考えたあと、彼は言った。

 「兄さん。電流じゃなくて、操作できないようにしましょう」

 呼気センサーでアルコールを検知したら、スマートフォン自体が動かなくなる仕組みである。

 僕は思った。

 「最初からそれで良かったんじゃないか……」

 こうして高圧電流スマートフォンは、酔っていると操作できないスマートフォンとして改良された。

 これで安心だ。もう深夜の意味不明なツイートは消える。

 みんなそう思った。

 だが、数日後、別の問題が発覚した。

 酔っ払いツイートは、確かに消えた。

 その代わり、 素面(しらふ)で病んでいる落語家

 ──つまり一番ヤバい奴らが、かえって目立つようになってしまったのだ。

 酔っている時の弱音は、まだ笑える。だが素面の病みツイートは、どうにも笑えない。

 そこで協会は新しいルールを作った。

 病みツイートをすると、イエローカード。二枚でレッドカードで、スマートフォン没収。

 ただし、没収されたスマートフォンを取り戻す方法はある。

 寄席の高座に無償で70回上がること。

 予算の少ない協会の考えそうなことである。

 そんなある日、一人の真打がスマートフォンを没収された。

 その投稿はこうだった。

 「最近、前座さんたちの様子がおかしい。まるで誰かに操られている」

 協会はこれを「病みツイート」と判断した。

 すでになぜかイエローカードを一枚持っていた真打は、これが二枚目となり、スマートフォンは没収された。

 そして今、無償の高座を続けている。

 「残り53回なんだ」

 そう言って、寂しそうに笑った。

 そして小さく続けた。

 「……あのツイートは、病んでたわけじゃないんだけどな」

 僕はその言葉を、笑えなかった。

 なぜなら――

 僕にも、思い当たる節があるからだ。

 最近、前座さんたちの様子は実際におかしい。

 目が虚ろで、どこか遠くを見ているような顔をしている時がある。

 そんな時に限って、理解不能な騒動を起こす。

 ──まるで、誰かに操られているみたいに。

 ……やはり最近、楽屋の様子がおかしい。

― 続く―

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