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2026年3月の最前線(聴講記:令和鹿芝居「髪結新三の巻」/玉造小劇店「カラサワギ」、講談界短信)

「講談最前線」 第15回

聴講記:玉造小劇店「カラサワギ」

 今から40年前、小説家であり、放送作家であり、ミュージシャンでありと、マルチな才能を武器に活動していた中島らもが、わかぎゑふ(当時は、若木え芙)を誘い、ナンセンスなやり取りをベースに、人間臭さを醸し出した芝居らしい芝居を目指して旗揚げされた笑殺軍団リリパットアーミー。

 時代や劇団の変遷を遂げ、その後、リリパットアーミーIIと名を変えた劇団が、その前史から数えて創立40周年の特別企画として演じたのが「わ芝居~その亖(よん)本格的小型時代劇 『カラサワギ』」(脚本、演出・わかぎゑふ。2017年初演)だ。

 今回の試みは、同じ演目を芝居バージョンと浪曲バージョンで見せるといったもので、旭堂南華が出演する芝居バージョンへと足を運んだ(浪曲バージョンには、春野恵子と曲師の藤初雪、旭ちぐさが出演)。

 舞台は元禄時代……、となれば、講談で言えば、赤穂事件が起きた頃。尼崎藩に新しく仕えることになったのは、杉田久右衛門(長橋遼也)という若い侍。奏者番(そうじゃばん)という、この芝居で言えば、他藩へ贈り物を献上するために美味しいものを探す役に任命され、日々探求に明け暮れる。

 ところがある日、長屋で同居する清吉(うえだひろし)の留守の間に、台所で生首を発見してしまう。同じ頃、藩内の見世物小屋で、首をひと舐めすれば、その人の過去や人生を言い当てるという芸が披露されることになり……という、なんともケッタイなストーリーだ(笑)。その芝居小屋での太夫役を務めたのが、なみはや講談協会会長の旭堂南華で、大きな鬘(かつら)を被り、物語の展開をうまく紡いでみせた。

 以前から、リリパットアーミーの芝居に感じてきたのは、ひと言で言えば“うまい”ということだ。その演技力の高さもさることながら、個々の人物が立ち、愛嬌たっぷりのセリフに加え、リリパットアーミー特有の、と言っても良い、相手の言葉に被せるような早いセリフ回し。そして息をもつかせぬ展開で、その独特な世界観に没入させる、まるで観ているこちらまで舞台の上で立って観ているような気持ちにさせられるといった点。

 言ってしまえば、真面目に時代考証なんかをしていけば、そんな設定やセリフ回しなんて!といった点も現れてくるが、そんな野暮な指摘は承知の上で、とにかく面白くて、芝居の楽しさが伝わればいいじゃないか!といった、作り手と演じ手の思いが伝わって来るような、そんな楽しい時間を今回も過ごすことができた。

 そんな芝居で、南華はナンセンスなやり取りが飛び交う中で、いたって真面目に自分の与えられた見世物小屋の魅力を伝え、ストーリーの謎解きにもひと役もふた役も買うといった役どころで出演。本業さながらの口上がまた聞き物で、せっかく大袈裟とも言える鬘を被って出て来たのだから、それでもって立ち回りを……という訳にはいかないだろうが、どこか怪しささえ感じさせる存在感が芝居にアクセントを与えており、ぜひまた、今度はあっと驚くような役どころを見てみたいと思わせられた。

 近年、リリパットアーミーの東京公演は多くはない。落語やお笑いを取り入れたストーリー展開の多い芝居を見せてくれるだけに、もっと東京でも楽しめればと、改めて思った。

(2026年2月25日、下北沢711シアターにて)