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ない物ねだり ~小堀さんのこと~

「すずめのさえずり」 第七回

ない物ねだり ~小堀さんのこと~

画:原田みどり

古今亭 志ん雀

執筆者

古今亭 志ん雀

執筆者プロフィール

 明けましておめでとうございます。

 これが掲載されるのはいつなんだろう。まあ寄席は一月いっぱいはお正月らしいのでいいか。

 暮れにテレビを見ていたら、『ザ・ノンフィクション』という番組をやっていて、お笑いコンビ「ガッポリ建設」の小堀さんが取り上げられていた。

 小堀さんは「クズ芸人」なのだそうだ。

 見ていると、ネタ見せにも行かずに所属していたワハハ本舗をクビになり、ラーメン修行をすれば初日に寝坊で遅刻(このときのラーメン屋の店長さん、静かに怒っているというか、期待した自分に失望しているというのか、とにかくなんとも言えない表情をしていた。ああいうタイプの師匠は見たことがないので怖かった)、お坊さんになる!と紹介してもらったお寺も二日目で逃げ出してしまうなど、いくらなんでもこれはヤラセじゃないのか、と疑ってしまうほどの逸材だ。

 小堀さんと相方の室田さんは、元落語家である。

 私は前座時代、楽屋に遊びにいらしていた室田さんに「キミは捕虜に似てるね」と言われたことがある。

 今よりかなり痩せていたし、坊主頭で虚ろな目をしていたしなあ。

 「カラテカ」の矢部太郎さんに似ていると言われたこともあるが、「捕虜」に「似てる」というのがなんとも言えずおかしく、ああそうかオレは捕虜なんだなあ、と妙に納得してしまったものだ。

 お二人とも二ツ目になってから結成されたコンビなので、そんな小堀さんでも前座修行はクリアしたということだ。じゃあ今辞めちゃったりクビになったりした人だって、なんとかなったんじゃないの。

 今は別の仕事もされている室田さんにたびたび金の無心をし、弟子からすらもお金を借り(あの人に弟子がいるというのもすごいが)、ご自身の主な収入源はお金をもらって酒席を共にする「ギャラ飲み」だという小堀さん。

 今回は後輩にご馳走するため、と称して室田さんに借りたお金をパチンコで溶かしてしまったそうで、さすがに室田さんも堪忍袋の緒が切れたのか、昨年末をもってコンビは解散してしまった。

 確かに全てにおいて小堀さんに非があるとは思う。自分は絶対にああはなりたくないし、もしあの境遇に置かれたら、一年ももたずに野垂れ死にしてしまうかもしれない。

 しかし、それでもなお、あのように世のしがらみの全てから解放され、どれだけ周りに迷惑をかけようが白い目で見られようが、やりたい放題に生きている、浮世離れした人に、ほんのわずかにだが、憧れのようなものがあるのはなぜだろう。

 室田さんも、ご自分には普通の社会人としての生活があり小堀さんにはそれがない、ということに負い目があるようなことを言われていたが、なんだかその気持ちがわかるのである。