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青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (後編)
鈴々舎馬風一門 入門物語
- 落語
師匠とお内儀さんの優しさ
入門してしばらく、拙は「鈴々舎馬ん頭」でござんした。師匠の強行権主体の一門だと思いきや、お内儀さん……また本人の意思なども汲んでいただける一家と言うか、一門で、「楽屋入りした時に、年下の先輩から呼び捨てにされるのに馬ん頭がいいだろう」という、お内儀さんの真心にございます。泣ける話だ。が、真心を用いると、宗教団体で多用しているところがあるので、ご配慮とさせていただきます。
「楽屋、何があっても半年は我慢しろよ」
師匠に言い渡されておりました。どこか直情径行なところのある私に、師匠はしばらくして「コイツは案外、ウチにふさわしい善い人間ではないだろうか?」と考えられたようで、楽屋に行って、拙より真面目そうに映るが、その実、陰湿な、古典落語ばかりに心血をそそいでさえいれば、「内面の闇から光の当たらなかった世間の婦女子に、怨嗟の念を込めて、噺の力で復讐してやる!」と考えている、小動物を虐めるような奴原に、シティボーイあがりの私が陰湿にあたられるのを憂いてくださったのでございます。
兄弟子の全亭武◯兄さんのように、東京を代表する愚連あがりの、面倒くさいから集会にはのべつ参加はしないが、まとまった面目を保つ集会や茨城県の支部への遠征など、形をつくる大集会の時には老舗暴走族に請われて出向いて行くような札付きの方でしたら問題ないが、拙は基本的に暴力を嫌う花と檸檬の木と動物を愛でる男にございます。海千山千国立公園の師匠とお内儀さんに心配されてもごもっともな話でございます。

金也兄さんの間に