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阿修羅

林家きく麿の「くだらな観音菩薩」 第2回

手の届かない存在に

 奈良にある興福寺の国宝館って、素敵な仏様が沢山いらっしゃるんです。千手観音様や仏頭、釈迦十大弟子、八部衆などなど、挙げるときりがないほどに心躍る仏様がわんさかと。そして特に人気なのは、阿修羅様です。言ってしまえばスターです。

 そんな阿修羅様は、以前はガラスケース越しに数十センチ先に見ることができた、手の届きそうなアイドルでした。しかし、2009年に国立博物館で行われた阿修羅像展で一躍、全国区の人気者になってしまったんですよ!

 「いやいや、もともと人気者だっただろ!」っておっしゃいますか? はい、そうなんですよ、人気者だったんですけど、まぁ勢いが凄かった。日ハムの大谷選手からドジャースの大谷選手になったみたいな感じでしょうか。ご尊顔を拝するのに、二時間待ちは当たり前の大人気でした。阿修羅様を観るために並んだ列が、上野公園から奈良の興福寺国宝館まで続いた!……なんてことはないですが、とにかく凄い人気!

 そして新しくなった興福寺国宝館では、なぜか八部衆が主役となり、近くにいらっしゃった阿修羅様や迦楼羅様は遠くステージの上へと行ってしまわれたのです。

 あぁぁ、あんな近くにいたのに、今はもうあんな遠くに行ってしまわれたのですね。気軽にお話ししてくれた貴方は、もういないのですね……。

興福寺の阿修羅像は、若々しく繊細な表情
 を持ち、戦士としての強さと内面的な苦悩
 を併せ持つ姿で知られている
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