2025年6月の最前線【後編】(軍談が今、面白い! ~軍談の意義と再認識、新しい姿)
「講談最前線」 第3回
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2021年に「軍談倶楽部」を立ち上げた田辺銀冶(田辺銀冶Xより)
講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。
講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。
講談における軍談の意義
「軍談」を辞書に求めてみると、次のように説明されている。
① 江戸時代の通俗小説。昔の合戦を材料としたもの。また、軍記物。軍書。
② 軍記物に節をつけてよみ聞かせること。また、いくさの話をすること。
(「日本国語大辞典」より)
②に見える「節をつけて」というのがいささか気になる表現だが、『三方ヶ原軍記』や『甲越軍記』、講談の原点にある『太平記』に『源平盛衰記』といった数々の軍談は、演者の口調やリズムなどの語調を活かすことで、描かれる軍記物の世界は無限に広がり、それに比して聴く楽しみもまた増える。
では、改めて「軍談の魅力とは?」と尋ねてみると、
面白さといっても、言葉は難しいし、何が面白いんだろう(笑)。でも、リズムやメロディといった音楽的な特徴もあるので、そういったものを楽しんでもらいたいですね。読み手としても正解がわからない。読む度に変わります。変わるからこそ、読んでいて楽しいし、聴く方も楽しいはずです。(宝井琴凌)
言葉自体が持つ力をストレートに出していけることです。先人たちが伝えてくれた『三方ヶ原軍記』に『川中島合戦』といった軍談の台本は練り上げられていて、よく出来ています。そうした作品が日本語の語感やリズムで研ぎ澄まされていくのが、読み手の楽しさであり、同時に苦労する点です。軍談はだからこそ面白い。その面白さが伝われば聴いている人にも伝わるはず。伝わればいいなあ……。(宝井琴鶴)
私にとって軍談とは格好良いもので、核となるようなもの。銀冶の軍談を聞くと胸が熱くなる!とお客様を泣かせたい野望はありますが、現実はやってもやっても上達しません! 今回は『太平記』に『源平盛衰記』、『太閤記』に新作などなど、幅広い演目と普段の定席では軍談を読まない出演者も出てくれますので、新たな魅力を楽しんでいただけたら嬉しいです!(田辺銀冶)