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あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(前編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第4回

師匠の芸に魅せられて

鯉花 やっぱり『笹川の花会』です。聴いていて自然と涙が出てきました。身震いもしました。それまで「良いお客さんでいなきゃ」と思っていたのに、心から「弟子になりたい」と思った自分にビックリしました。でも理屈じゃ止められないんですよね。入門のお許しが得られて本当に良かったです。

 あと特に思い入れがあるのが『扇の的』。バイトしている合間をぬって夢中でずっと聴いていました。夜中まで働いて、片付けを終えて、そのあとにまた聴く。元気が出て、気持ちがいい。師匠の声って素晴らしんですよ。グイッと引っ張っていく声で、ドッシリとして深い声ではあるんですが、温かみのある声なんです。

 そうそう、始発の電車に乗る時も聴いていました。バイトは辛いことも多かったんですが、辛い気持ちがどっかに行っちゃうんです。

鯉花 悩みますね、その時々で変わりますから……。今は『隆光の祈り』でしょうか。話が入り組んでいるので、難しいと言われることがありますが、真打になった時に売り物にしたい一席です。ドロドロしてますけど、講談の面白さが詰まっていて、やっていて楽しい。

 呪い殺そうとしている場面はおっかないですが、最終的には悪い奴に勝つので、ある意味、縁起が良い気もします。それにマンガみたいに絵が浮かんでくる話なので、口慣れてきて、さらにそういったところが描ければ、楽しい話になるはず。この話は特に貫禄がなければいけないと思いますし、何とか説得力が出るように、ブラッシュアップしていきながら読んでいきたいと思っています。

(以上、敬称略)

(後編に続く)