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あふれる情熱と笑顔 神田鯉花(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第5回
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映画への熱い思い入れ
主演を務めた映画のタイトルは、『あて所に尋ねあたりません』。次代を担う若手映画作家を発掘・育成する文化庁の委託事業の一つ「若手映画作家育成プロジェクト」で制作された。
派遣労働者として倉庫で働く三石瑞穂がその役で、同僚の男性が辞めることを知り、自分の思いを伝えるために手紙を渡すも……というストーリー。淡々と進んでいく物語の中で、ストーリーに身を任せるように、それでいてストーリーを活かすように、鯉花が考える主人公の姿を印象的に演じている作品であり、高座とはまた異なる(?)女優・神田鯉花が作品の中で大きく息づく様を見ることができる。父親役にお笑いコンビずんのやす、母親役に実力派俳優の中島ひろ子が顔を見せている。
より詳細な内容などは、この話楽生Webの「講談最前線」5月号をご参照いただきたいが、その舞台挨拶の場で、監督と脚本を務めたたかはしそうたが、寄席で働く鯉花の姿を見て、この人だ!と思ったという話をしていたのも印象深い。
―映画には元々興味があったんですか。
鯉花 映画は学生時代によく観ていました。以前のミニシアターで公開されていたような、耽美的で廃退的な作品が好きで、『小さな悪の華』(仏・1970年製作)に、ホドロフスキーの『リアリティのダンス』(チリ・2013年製作)に『エンドレスポエトリー』(チリ・2016年製作)。あとはスプラッターものとか。
―クセは強いけど味がある、独特な映画ばかりですが、それがまた鯉花セレクションらしいですね。それではまた映画に出演したい!と。
鯉花 今後も機会があったら、ぜひ、やってみたい!死体役とか。
―し、死体役……?
鯉花 それにアバンギャルドな役なんかも楽しそう。とにかく何でも演じてみたいので、オファーをお待ちしております!
自分以外の好きな映画作品を尋ねるのは、特に映画好きとしては面白い。鯉花がここに挙げる作品は必ずしも王道ではなく、人間の内面に迫ったものばかりだ。『小さな悪の華』はジョエル・セリア監督による、二人の少女の残酷なまでの友情と愛を描いた衝撃的なラストが待ち構える作品。アレハンドロ・ホドロフスキーによる二作品は、カンヌでも公開された監督の自伝作品で、それこそ「連続物」。混沌とし続ける半生を映像美で描き出した作品である。