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悩ましい食の話と雀々エピソード1
「ラルテの、てんてこ舞い」 第1回
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されど過酷な現実
ところが、ある時からパン弁当の値段がどんどんと高くなり、心なしか量も減ってきたようにも思う。
意を決して、店員さんに苦情を言うと「あのですね、今、小麦の値段が高騰してまして、それはそれは大変なんですよ」と熱く説明された。聞けばロシアとウクライナの戦争の影響で、世界中の小麦が少なくなり、輸送コストもあがり、とにかく危機的な状況なのだそう。
そう言われれば、楽屋にせっせと弁当を届けるしかない一市民としては、反論する術すらない。まさか、世界情勢の悪化が、こんなにも早く楽屋の弁当にまで影響を及ぼすとは……。考えが至らなかった。
また、コロナ禍から弁当界は一変した。金額が徐々に上がり、いや、どんどん上がり、配達料まで加算されるようになった。
もっと言うと、「注文は30個以上!」と制限まで出してくる店も多くなった。落語会など、せいぜい注文数が十数個、下手したら一桁ということもあり、これでは注文すらできない。
配達料にも驚く。弁当代の総計が12,000円のところ、配達料が36,000円! 「おいおい、どういう計算なんだ! それはないだろう」と目を疑った。つまり、今となっては、もう何を選ぼうではなく、何が注文できるのだろうという弱い立場に成り下がってしまったのである。
とはいえ、弁当の注文。これは私における大事なミッションだ。ここから逃げるわけにはいかない。
弁当。されど弁当……。私は未だ、迷宮の森にいる。