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社会派講談の旗手 神田香織(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第7回

戦争体験を語り継ぐ講談の新たな役割

香織 今は『はだしのゲン』をやる時には、講談をやってそれで終わりではなく、聴いた後にトークコーナーを設けて、誰でもいいので登壇してもらって、戦争について、そして今の日本について思うことをお話ししましょうというのを付けてやり続けています。

 これまでもどうしたらゲンたちが喜ぶ世界が訪れるかをみんなで話し合いましょうという風にやってきましたし、これからも取り組んでいきたいと思っています。学校でももっと近代の政治史を教えないといけないでしょうね。今は18歳で選挙権が与えられるだけに、しっかりと日本の歴史を学んで、政治のことも自分で考えて判断できるようにしないといけませんね。

香織 とにかく自分の体験を色々と話してくれました。どんな時にどんな思いをしたとか、お会いするたびに熱い話をしてくださいました。でも、最初、台本をお見せした時には、首をかしげたんです。

 だから「活字と語りはちょっと違うんで」って言って、その場に座ってポンポンと叩いていきなりやり始めたら、一席終わった後に「ああ、なかなかいいね。どんどんおやりなさい」と言ってくださいました。本当に素晴らしい方でした。

 あれだけのご苦労をされていても、悲しい顔をしないんですよ。いつも微笑みといいますか、人と話す時は力強く、目を輝かせながら、熱く元気よく語ってくれました。

香織 そうですね。許可していただいて、講談の形にしてみていただいて、聴いてもらって。最初は「講談ね……、浪曲は好きなんだけど」というような感じだったんですけど、山陽師匠も一緒に考えてくれて、「『はだしのゲン』ね、僕が読んであげるよ」って、カセットテープに入れてくれたり、人と人とのチームプレイで生まれた作品ですね。