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社会派講談の旗手 神田香織(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第7回
- 講談
講談の未来を紡ぐ
―先生のご一門もみなさんしっかりと講談に取り組んでいます。
香織 以前は他の師匠からは教わってはいけないということがあったんですが、今は色々な講釈を読む人が教えてくださいますし、貞水先生がご尽力されて「伝承の会」を残してくださったので、弟子たちも色々な本格的な芸を教わることができます。私は新作が多いので、弟子たちには最初の基本的な演目を教えて、あとは周りのみなさんに育てていただいています。弟子たちは勝手に成長してくれている感じですね(笑)。
―織音、伊織、おりびあと三人三様で頼もしいと思っています。
香織 織音さんは芸歴も長いですし、私が何かを言うことはもうありません。伊織は最初に講談教室に来た時には優秀で、ネタをすぐに覚えますし、周りもプロになれと言っていたんですが、生活もうまくいっていましたし、やはり不安定な世界ですから、私の方からはプロになれとは口が裂けても言えませんでした。でも本人が自分で決断をして入門してきました。

今はここにおりびあが並ぶ
―おりびあさんは最近、軍談に目覚めているようです。
香織 おりびあの軍談はいいですね。元々、歌を唄う子でしたからね。今、ギターを弾いて、谷川俊太郎の『死んだ男の残したものは』とかを、この間も平和の集いで、他のみんなは講談をやって、彼女は歌を歌って、その時に来ていたお客さんから声がかかって、それが仕事に繋がっていました。並木路子の講談も読みますから、その中で唄って、そんな活動をしています。今は宝井琴凌さんが修羅場を教えてくださって、なかなかいいよという噂を耳にします。
―先生の今後の活動についてお聞かせください。
香織 最近、物忘れが激しいのと、身体のメンテナンスをしっかりしながら、できる限り一回一回の高座を誠実に取り組んで、お迎えを待ちたいと思っています。
―そんな……。こういう不穏な世の中ですから、元々はニュースを読んでいた講談という芸がますます必要になると思っています。それに講談が再注目されていますから、先生の役割は大変に大きいと思っています。
香織 私が講談を始めた頃より、ハッキリ言って、世の中が悪くなっています。それに比例するように、講談が注目されてきているのは、それだけ講談の動きが再評価されていることではないでしょうか。ですから、講釈師一人一人が自分がなぜこの話をやるのかということを確認しながら、自分のネタを増やしていって、活躍していってもらいたいなあと思いますね。私もそうした気持ちを忘れずに、講談に取り組んでいきたいですね。
▼神田香織(講談協会 公式ホームページによるプロフィール)
(以上、敬称略)
註:神田香織の『お菓子放浪記』は、8月21日の講談協会定席・夜の部の「戦後80年 平和と戦争をかたる」(会場・新宿永谷ホール(Fu-))で聴くことができる。詳細は、下記の講談協会・公式ホームページを参照のこと。
▼談協会・公式ホームページ

(了)