ぼうけんだんきち
「ずいひつかつどお」 第3回
- 落語
立川 談吉
2025/08/28
絵・フジマリ
師匠談志の家にあった、冒険の記憶
「だんきちかあ、じゃあ『冒険ダン吉』だね」
「そうなんですよ~」
落語会の終わりや打ち上げなどで、ご年配のお客様と何度も交わした合言葉のような会話である。
しかしこれはあながち間違ってはいない。当時、練馬の奥地にあった談志の家には、『冒険ダン吉』の絵が描かれたお皿が大事に飾られていた。王冠をかぶって腰蓑をつけた裸の少年が大きな象に跨り、槍を携えた原住民を従えて楽しそうに片手を振っている構図だったと記憶している。
昔ながらの素朴な絵柄ではあったが、一枚のお皿の中にいくつもの情報が詰まっている楽しいもので、師匠もきっと冒険心をくすぐられたのだろうと思う。談志が弟子に初めて談吉と名付けた時(最初の談吉は現在の談幸師匠)、『冒険ダン吉』を頭に浮かべていなかったわけがない。さらには、中身はともかく「談吉」という名前自体を好んでいた証拠だとも思っている。全くもってありがたい名前を頂戴したものである。
『冒険ダン吉』は、1933年(昭和8年)から1939年(昭和14年)までの間、「少年倶楽部」で連載された島田啓三による漫画作品である。日本に暮らすやんちゃな少年ダン吉が、ひょんなことから飛行機に乗り込み、アフリカに飛ばされる話。当時、子どもたちの飛行機への憧れや海外への好奇心を掻き立てたのだそうだ。
今でいう『ワンピース』のようなものだと言いたいところだが、時代背景を考えると影響はそれ以上だったのかもしれない。ちなみに登場するキャラクターは、ネズミのカリ公、先住民の蛮公、オランウータンと暮らしていた冨士夫などなど、大変にバラエティに富んでいるが、実は私もまだ読んだことがない。機会があれば読んでみたいと思うが、待ってるだけでは機会は訪れない。やはり本を探しに、アフリカに冒険しなくてはいけないのかもしれない。
今回エッセイのテーマを「冒険」としてみたが、私自身はあまり冒険しないタイプである。居酒屋に入ったとしても謎の創作料理を頼むことはないし、今日は特別だからと、普段飲まないテキーラを頼み、塩を舐めてテキーラを喉に流し込み、ライムを齧(かじ)って「ウ~、テキ~ラッ!」なんてこともしない。大好きなポテトチップスを買う時でさえ、オーソドックスなうすしおやコンソメパンチを選ぶことが多い。
「なんだよ、冒険ダン吉だろ、ちゃんと冒険しろよ」と思うかもしれないが、持って生まれた性格なので許してもらいたい。
▼冒険ダン吉(財団法人大阪国際児童文学館 子どもの本100選)
いま読まれています!
「くだらな観音菩薩」 第8回
弥勒菩薩(半跏思惟像)
~地球滅亡の時に現れるスーパースター
林家 きく麿
2025/12/16
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
「二藍の文箱」 第7回
つくまとさわぎとクリスマス・キャロル
~初高座は一生に一度だから
三遊亭 司
2025/12/02
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
シリーズ「思い出の味」 第14回
馬琴と琴星と琴鶴と琴人と ~師弟の食事はいつもちぐはぐ
~どじょう鍋からサンドウィッチまで。師弟の食卓は、人生の味がする
宝井 琴鶴
2025/10/17
シリーズ「思い出の味」 第17回
うなぎとらくごの味
~落語家と鰻職人は、どこか似ている
三遊亭 玄馬
2025/12/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第一話 「危機感をあなたに」
~笑撃のストーリーが今、始まる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/08/12
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「くだらな観音菩薩」 第8回
弥勒菩薩(半跏思惟像)
~地球滅亡の時に現れるスーパースター
林家 きく麿
2025/12/16
「二藍の文箱」 第7回
つくまとさわぎとクリスマス・キャロル
~初高座は一生に一度だから
三遊亭 司
2025/12/02
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
シリーズ「思い出の味」 第14回
馬琴と琴星と琴鶴と琴人と ~師弟の食事はいつもちぐはぐ
~どじょう鍋からサンドウィッチまで。師弟の食卓は、人生の味がする
宝井 琴鶴
2025/10/17
「講談最前線」 第10回
2025年10月の最前線【後編】 (聴講記:日本講談協会定席、講談のオススメ入門書②)
~人物伝の魅力全開
瀧口 雅仁
2025/10/08
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「噺家渡世の余生な噺」 第8回
旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る
~「まだ自分は生きている」と感じるために
柳家 小志ん
2025/12/14
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「令和らくご改造計画」
第五話 「ヨセジャック事件」
~落語家にとってのマクラとは何か?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/12/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第8回
やめたら負けが確定する! 博打好きのたわごと
~席亭のお一人は、元競馬記者!
シン・道楽亭
2025/12/10
シリーズ「思い出の味」 第11回
食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶
~焼肉は落語
桂 笑金
2025/08/17
「くだらな観音菩薩」 第8回
弥勒菩薩(半跏思惟像)
~地球滅亡の時に現れるスーパースター
林家 きく麿
2025/12/16
「お恐れながら申し上げます」 第4回
大山詣りに行ってきました
~おじさん3人と私の珍道中
入船亭 扇太
2025/12/11
シリーズ「思い出の味」 第17回
うなぎとらくごの味
~落語家と鰻職人は、どこか似ている
三遊亭 玄馬
2025/12/13
「噺家渡世の余生な噺」 第8回
旅こそ、己の浅さを知る手段。だから若いうちに出る
~「まだ自分は生きている」と感じるために
柳家 小志ん
2025/12/14
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
シリーズ「思い出の味」 第16回
師匠と香港楼と命名秘話
~緊張と感謝の中で頬張った麻婆豆腐
神田 紅純
2025/12/04
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第8回
にらみ返し、大工調べ、短命
~私の落語家人生を延命してくれた、喜多八師匠
林家 はな平
2025/12/06
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「講談最前線」 第12回
2025年12月の最前線【前編】 (「イベントスペース鈴丸」オープン、講談のオススメ入門書③)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2025/12/15
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第8回
今日は宇宙一の美が誕生した日
~読むと元気になる千春ワールド!
東家 千春
2025/12/03
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様、香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「講談最前線」 第11回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「くだらな観音菩薩」 第7回
目青不動
~人の縁に感謝。ありがとうございます
林家 きく麿
2025/11/16
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03