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オシャレだね その一言が 聴きたくて(後編)

三遊亭朝橘の「朝橘目線」 第5回

六代目円楽師匠とのガチンコ謎かけ対決!

 六代目の円楽師匠のお供で、ある落語会に出演した時のこと。師匠の一席の後、楽屋一同で大喜利をすることになった。お題は謎かけ。笑点メンバーの生大喜利を観られるというんで、お客様は大変な盛り上がりだった。

 お題をその場で頂戴して、即興で謎かけをやるという、ガチンコスタイル。これはスリリングでありまた、事故の発生率もそこそこある。私はそれが得意でもないが、嫌いではない。六代目の師匠に敵わないにしても、少しはいいとこ見せたい。

 師匠が答えるより早く、自分が回答した。そこそこ良い出来だったと思う。お客様は拍手とともに「おぉ~」と声を上げたそれに対し、師匠はそっぽを向き、猛烈に怖い顔で考え込んでいた。

 数秒後、手を挙げた師匠は物凄く上手い答えを披露し、私に向かって「どうだ」と言わんばかりの顔をした。大人げないのはさておき、これが上手いこと言われた時の、男性の正常な反応なんだと思う。

 女性の「おぉ~」は、それに対抗する意思のないことを表している。それは男の土俵。男はもっと上手いのを言いたくなる。上手いのを聴くと、菊正(菊正宗)が飲みたくなる。

 菊正を飲むと、上手いことが言いたくなる。だから芸人同士、酒の席でふと謎かけを始めると、本当に無言になる。蟹食べるより静かになる。

 打ち上げで、もし「この噺家さんうるさいなあ」と思ったら、謎かけを振ると良い。しばらく黙る。

男女円満の秘訣は言葉のオシャレにあり?

 ねづっちさんの漫談は、何度聴いても惚れ惚れする。あの域までいくと、対抗する気になれない。パリコレモデルを目の当たりにしたようなもので、ため息しか出ない。

 ご本人に聞いてみたいが、おそらくねづっちさんのファン層って男性率が高いと思う。あれは男が憧れる芸だ。

 宴席で小咄(こばなし)を頼まれることもしばしばある。披露すると大概、中高年男性の方が喜ぶ。

 「こういうのを学ぶ講座とか、あればいいのに!」

 会社経営者のおじさまに、真顔で言われたこともあった。小咄スクール、需要はあると思う。ご用命の方はぜひご一報を。

 つまるところ、言葉遊びは男性が好む傾向が強く、女性はそれを邪魔せず優しく楽しんでくれる。だからこそ、男はいいとこ見せたくて、より秀逸な言葉選び、男のオシャレに励む。

 男女仲良く、夫婦円満。その秘訣、この辺に隠されていないだろうか。女性がチョイスした服や髪型を、男は選び抜いた言葉で褒める。完璧だよ。見た目のオシャレは女性に任せ、男は言葉のオシャレを追求しよう。

 文章を書くのはとても好きで、この連載の話が来た時も非常に嬉しかった。書き終えると、必ず読み返す。推敲しつつ、自分の文章に思わずうっとりする。「ああこの例え、秀逸だなあ」「ここの展開は実に良い流れだな」と一人ニヤニヤと笑みを浮かべ、昼ならコーヒー、夜は晩酌用の酒を傾けながら悦に入る。

 何度も何度も読み返す。実にキモい。服装や髪型以前の問題である。

(毎月8日頃、掲載予定)