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第二話 「集まれ! 蘊蓄おじさん」

「令和らくご改造計画」

#3

 彼は、にやりと笑って言った。

かえる「兄さんたちの出番ですよ!」
僕「え、俺たち?」

かえる「そう、新作落語です。それも若手新作派の、迷走し、シュールと意味不明をはき違えた、目も当てられない新作落語を――」
僕「ああっ、言葉に気をつけて!」

かえる「失礼しました。ただ、蘊蓄おじさんが最も嫌う種の“新作落語”を高座から、次々と浴びせればよいのです。逃げようにもドアは開かず、客席は次第に阿鼻叫喚……。泣きわめく者、うなだれて動かない者、笑っている者」
僕「いや、新作落語を聴いて、笑っているのは良いことじゃない?」

かえる「はは。頭がおかしくなって、わけもわからず笑っているだけです。さあそこでついに、この寄席から出る唯一の方法は、今後“ほかの客に蘊蓄を垂れないと誓うことだ”と告げます。すると」
僕「みんな逃げだしたい一心で、心から誓う……」

かえる「はい。こうして“蘊蓄おじさん”はいなくなるというわけです。誰も不幸になりません。……たぶん」

 “たぶん”の部分が怖すぎる。若手新作派の精神が崩壊してしまいそうなのに、ケアはないのか。むしろ僕らも一緒に洗脳されるのか?

 ――しかし、「毒を以て毒を制する」という発想は、妙に面白い。もしそれが成功すれば、穏やかで安全な客席となり、高座の努力もより届くだろう。思い切った計画だが、実行すべきかもしれない。