東新宿のカフェで起きた、小さな奇跡 ~落語家と地下芸人

「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第5回

姉ハラと初恋と、二人の約束

 さらに、どれくらい知っているのかを姉に確認すると、当時住んでいた家も近く、通学路もほぼ同じということが判明した。小学生時代に、私の自宅に遊びに来たこともあったそうだ(笑)。

 姉は小学生の頃、ガキ大将ならぬ、「ガキアマゾネス(姉ゾネス)」的なイケイケドンドンな性格だった。そんな言葉があるのか分からないが、私は当時、弟がゆえパシリにされたり、「姉ハラ」(姉ハラスメント)のようなモノを受けていたので、同級生のふう丈さん(当時は、岡村卓さん)もその被害者だったのかもしれない。

 そんな情報を聞いて、私はまず迷惑をかけたであろう「ガキアマゾネス」の件を謝罪しなければならないと思った。

 会の当日、ふう丈さんは、対面した私の緑色の髪に少し戸惑いながら、自己PRと真逆の大人しく、落ち着いた感じで、凄く丁寧なご挨拶をされた。そこで、(私が勝手に)事前に驚かされたので、逆に少し驚かせようと思い、

 「服部です、覚えてますか?」

 と、ふう丈さんに尋ねると、報道記者にスキャンダルを問い詰められた政治家のような渋い表情に。

 そのため、お互いの家の間にあり、その地域の人なら誰でも知っている、通称「かえる公園」(カエルの防止柵が入口にあることからそう呼んでいた)というローカル・キラーワードを放つと、『名探偵・金田一耕助』が閃いたような表情で、

 「あの!! 服部さんの……弟さんっっ!!!??」

 幼き記憶の回路がシュパパパパパーン!!!と甦った様子で、そこから急に一人だけ熊本弁で話し出された。その熊本弁は、自己PR通りの“声の大きさと表情の豊かさ全開の武器”だった。私は早くも楽しめた!(笑)

後年、通称「かえる公園」の入口に立つ二人

 そこから、簡単なこれまでの経歴と「ガキアマゾネス」の謝罪を伝えた。ふう丈さん、否、岡村卓さんは、当時をこう振り返った。

 「いえいえ、そんな! 謝ることはないです! お姉さんは可愛く、初恋の人でした!」

 私はまた驚かされ、そして安心した。会は終始、そんな話題で、会場打ち上げまで盛り上がった。

 打ち上げ中、ビールをおかわりするたびに酔いと声量が増していく、楽しそうなふう丈さんを見て、ぼんやり回想した。小学校からの帰り道、少し先を歩く、ふう丈さん(岡村卓さん)らしき、自分より少し大きい小学生を見て帰っていた記憶。あの小学生が、今、ご陽気にコマドで、ビールを呑んでいる。

 私も嬉しくなり、キッチンでビールを呑んだ。

 生まれた育った場所が近所で、お互いに田舎から大都会・東京に上京して活動し、ジャンルは違えど演芸に関わる同郷の人と25年ぶりの再会を果たしたのだ。その日の終わり、必ず二人会をやろうと約束を交わした。