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伝統を纏い、革新を語る 神田陽子(後編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」第13回

講談界の輪を広げる

陽子 山陽イズムは残したいなと思っています。ひと言で言えば「不易流行(ふえきりゅうこう)」。山陽は「くすぐりは新しく、世の中の流行りも意識して、古い伝統的なものも残していくことが大切なんだ」と、常に進取の気性でいて、若々しいなあと敬愛していたところです。

陽子 (笑)。京子さんは山陽の最後の弟子で、今日来たから「京子」さん。師匠も90歳でよく弟子に取りましたよね。病院のベッドの上で稽古をつけてたんですよ。師匠が亡くなったあと、形見分けの時に「入れ歯が欲しい」って(笑)。今も元気にコップの中にいますって。そんな彼女の姿を師匠に見せたかったですよね。

 あとは桜子さんにしても、陽乃丸さんにしても、このまま伸び伸びと進んでいってもらいたい。今から転ばぬ先の杖にしないで、失敗も芸の肥やしにすればいいと思っています。みんなしっかりしているし、色々な人と出会って大切にしているのが嬉しいですね。

陽子 子どもたちに講談を教えていこうと思い、日本講談普及協会というのを立ち上げたんです。最初に小学校1年だった女の子が、もう6年生になったりして、今度は弟さんや妹さんを連れてきてくれたりして、段々とそういった輪が広がっていっています。

 他にも名古屋の中日文化センターさんや、仙台の花座さんで講談を教えているんですが、私は講談を教える教室がまた大好きなんです。だから一度、どこかのタイミングで、生徒さんを集めての講談大会を開きたいなぁと漠然と思っています。大阪はそういうことが盛んに行われていて、大企業がスポンサーについてくれて、賞金や副賞が出るんです。そうなると、やっている人も腕が上がりますよね。だからそういうアマチュアコンテストみたいなことができればいいなあと思っています。

 講談が好きだという愛好者の層を広げれば、多くの方が見に来てもくださいますし、そこで交流も生まれるので、そういった愛好者やリピーターを広げるのが、今後の講談界に必要なことだと思っています。そんな会のスポンサーになっていただける企業やみなさまを募集しております!

陽子 あの会も面白い試みで、初めてのお客さんって、やっぱり空気感が違うんですよね。出演している方も緊張しながら、どうしたら広げていけるかを考えています。お客様が来てくださるのが本当に嬉しくて、紫さんや紅さんといった兄弟弟子ともこれまで一緒に講談を盛り立ててきたわけですから、このまま講談の普及に努めていければと思っています。これからも応援していただいて、講談を聴きに来てください!

(以上、敬称略)

神田陽子(協会員紹介 日本講談協会)

神田陽子(協会員プロフィール 落語芸術協会)

(了)