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私が落語に感動した日 ~学校寄席の桂さんと鶴瓶師匠

「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第6回

圧倒された鶴瓶師匠の落語

 高校を卒業後、私は19歳で大阪・吉本興業のお笑い養成所(NSC)に入学。2006年の春に卒業し、プロの芸人を目指して若手芸人1年目として活動を始めました。

 そしてその年の夏、同期の芸人に誘われて住吉区にある無学亭という場所に落語を観に行くことに。熊本から大阪に出てきて、まだ1年ほど。環境に慣れることに必死で土地勘もありません。厳しい暑さの中、劇場だと思って向かった先は、雰囲気のある民家。その前で佇んで、開場を待ちます。

 同期から出演するのは笑福亭鶴瓶師匠と、そのお弟子さん数名と聞いていました。しかし、本当に超売れっ子の鶴瓶師匠が来るのか、もしかしたら熊本から出てきた私への「ドッキリ」や「悪ノリ」ではないかと、同期に対して半信半疑かつ、怪訝に感じていました。

 その時です。遠くから地元のおばさまたちと談笑しながら、独特の空気をまとったおじさまがやって来ました。テレビで観たことがある、誰とでも親しく接する鶴瓶師匠でした。タクシーで乗り付けて裏から入るようなイメージを勝手に抱いていたのですが、テレビの延長線上にいるような鶴瓶師匠が、そこにいました。

 私は急に緊張してしまい、同期に対しての謎の申し訳なさが込み上げ、「同期に動悸」を起こしました(笑)。

 客席には、50名ほどのお客様。かなり近い距離で若手の落語家さんが数名登場し、その後に鶴瓶師匠が登場。『たちぎれ』という噺を披露されましたが、私はその世界にぐいぐい引き込まれ、圧倒されたのを覚えています。

 テレビで拝見する「面白いタレント」としての顔と全く違う、落語家としての姿に心を奪われました。

『かえる公演』終了後のふう丈さんと筆者