うるささや 岩にしみ入る 俺の声

「朝橘目線」 第7回

兄さん、うるさいですよ

 10月中旬、池袋演芸場で高座を務めた。一門の特性上、なかなか上がれない場なので非常にうれしく、出番の後も楽屋の入り口付近にある椅子に腰かけ、ほかの出演者の皆さんと談笑させて頂いていた。すると突然「兄さん、うるさいですよ」と隣にいた同業者に注意された。

 さっきまで一緒にはしゃいでたくせに!というか、俺だけじゃないでしょ、うるさいの。「いや、兄さんがうるさいです」。そばに座っていたお囃子さんに聞くと「朝橘さんがうるさいですね」。ぐうの音も出なかった。

 これだけ言われるということは、うるさいんだろう。さすがに気を付けようと思った私は、先日、娘の水泳教室を見物した。周りにほかの保護者も並ぶ。みんな無言で我が子を見守っている。非常に静かな空間だ。

 そこへ妻が来たので、細心の注意を払って話しかけた。ボリュームを最小に絞ったつもりだった……が、私の声はとってもよく反響していた。即座に注意され、自分でも驚いた。

 師匠の教えを信じて精進した結果、喉に制御不能の怪物が宿ってしまった。きっとこれからも、この声で迷惑をかけると思う。でも悪気はないし、むしろ気を付けているつもりなんだと、私は声を大にして言いたい……。

 ああ、それがいけないのか……。

(毎月8日頃、掲載予定)