雀々が残した大提灯

「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回

師匠の思いを感じて

 つぎに、この大提灯をどうしよう。東京でも追悼公演がある。京都の会場と異なり、ビル内の会場に飾るとなると、かなり手間が掛かることは容易に想像できる。

 一応、同じ話を舞台監督に話をしたところ「雀々師匠、きっと飾ってもらいたいんですよ」と、意気に感じてくれたのか、舞台監督がすぐに動いてくれた。

 「昔の同級生に提燈屋がいるので、聞いてみます」

 後で聞いたら、知人と言っても小学校時代の同級生らしい。卒業以来、会っていないにも関わらず、突然連絡入れるにはさぞ、躊躇と勇気があっただろう。連絡もらった同級生も驚いたに違いない。

 有難く嬉しいが、その様子を思い浮かべると少し滑稽で、つい笑ってしまった。

京都府立文化芸術会館の正面玄関に飾られた大提灯

 不思議なことは、他にもあった。

 雀々師匠の葬式当日。出棺の儀式を終え火葬場へと向かう際、霊柩車は合図のように「フォーン」と大きなクラクションを響かせた。その瞬間、桂優々さんが手のひらに置いていた雀々師匠の数珠が、一縷の光を放つように、パーンと一気に砕け散ったのだ。

 パラパラと四方に転がる数珠の球を拾いながら、この時も私は、師匠はきっと何か言いたかったに違いない、そう強く思った。いったい何を?

 「みんな、今まで有難うな」なのか、「俺はまだ、こっちにいたい」なのか。