雀々が残した大提灯

「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回

今もたくさんの人に愛される師匠

 事務所を開いて15年になる。

 雀々師匠がいなかったら、落語の仕事はしていなかっただろう。今でも落語界の中でお仕事を続けさせて頂けるのは、ほぼ9割が雀々師匠のお蔭だと言っても過言ではない。

 そんな恩人のために何ができるのか、天国の師匠は何を一番喜んでくれるのか。亡くなってから私は、ずっと考えていた。

 落語家による落語で天国に送ってあげる――。

 落語家としてこれが一番の供養なのではないか。そう思った瞬間、追悼公演の開催を心に決めた。

 長年に渡り、親しくして頂いた落語家さんや、お世話になった落語家さんたちにお声を掛けさせて頂いたところ、皆さん、二つ返事で快諾を頂いた。

 そればかりか、雀々師匠との想い出や、悼みのお言葉や気遣いの言葉を、沢山、たくさん頂戴し、その時のメールの文字の一つひとつを読みながら、有難くて有難くて、肩が震えた。涙で文字が滲んで見えた。電話も幾つか頂いた。

 この時は、涙声にならぬよう堪えるのに必死だった。私は、この時の我慢をきっと生涯忘れないだろう。

 これもすべては、桂雀々という人間の人徳だろう。多くのファンに愛され、多くの落語家に親しまれ、故人になってもまだ、愛され続けている雀々師匠は、本当に幸せ者だと思う。

 悔しいくらいに、羨ましい。