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11月7日は鍋の日 →高級食材を食いまくった男の疑問

「エッセイ的な何か」 第6回

恐ろしいほどの…

 以前、僕が所属する落語芸術協会で、福島の勿来(なこそ)温泉にて寄席が行われていた。

 それも単発の落語会などではなく、毎日開催。常打ちである。温泉センターの広間を改築し、きちんとした寄席の高座を作って、ここに真打、二ツ目、色物の先生と三組が毎日出演するという編成。もちろん、莫大な出演料が出るわけではないが、それでもしばらく滞在していれば、まとまったお金になる。

 温泉も入り放題、寝る場所とご飯も保証されている……とくれば、暇を持て余した二ツ目などにとっては実に有り難い勉強の場であった。

 その仕事に初めて伺った時、終演後の夕食。三人しかいない我々、なぜか大広間に通され、副支配人の言うことには

 「今日はアンコウ鍋をご用意しました。たくさんありますので、どんどんお代わりしてください」

 ……とのこと。高級食材、鮟鱇(あんこう)の鍋がお代わりし放題。もう、親の仇とばかりに食いまくりましたね。その鍋の美味かったこと! お腹いっぱいになってしまった後も、「まだまだ! もっとありますよ!」と勧められるという“わんこ蕎麦”状態。恐ろしいほどの歓待を受けたのだった。

 帰京後、その話をしたところ、仲間から「そんなもてなしは受けなかった」と聞き、ちょっとした優越感。我々だからこそのアンコウ鍋だったのだろうか。