〈書評〉 若手だった師匠たち 年間1000席の寄席通いノートから(寺脇研 著)
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第7回
- 落語
- Books
杉江 松恋
2025/11/19
さん喬、雲助、権太楼…名人たちの若き日を綴る
どんな偉大な芸人にも若手の時代はある。
そんな当たり前のことを改めて思い知らされた。寺脇研『若手だった師匠たち 年間1000席の寄席通いノートから』(東京かわら版新書)を読んだのである。
寺脇研は、2006年に退官するまで文部省(現・文部科学省)に勤めていたが、1975年には映画評論家としてプロデビューも果たしていた。「まえがき」によれば、落語を集中して聴き始めたのは1979年の秋からということで、そこから寄席通いの味を覚え、1980年代には年間千席以上の落語を聴くようになった。
1982年4月に、初めて専門誌「落語」に原稿が掲載される。以降、映画評論家の肩書のまま同誌のレギュラーとなり、同誌が不定期刊行になるまで「現代の噺家」についての連載が続いた。もちろん1980年代の「現代」である。
本書はその『落語』に「現代の噺家」「聴きたい若手」として取り上げた当時の若手落語家13人に、1983年春に二ツ目昇進した「若き二ツ目たち」として評した7人を加えた、計20人に関する論集である。寺脇は「東京かわら版」に1982年4月号から2000年6月号まで「客席の眼」というコラムを連載していた。その中に含まれている、該当の20人に関する文章も収録されている。
どの落語家が含まれているか、参考までに名前を挙げておく。真打昇進順でカッコ内が当時の高座名である。
はじめの13人が、柳家さん遊(六代目柳家小燕枝)、柳家さん喬、五街道雲助、柳家権太楼(柳家さん光)、春風亭一朝、立川左談次、三遊亭小遊三、柳家小里ん、林家正雀、古今亭志ん輔(古今亭朝太)、入船亭扇遊(入船亭扇好)、柳家小ゑん、金原亭馬生(金原亭馬治)、あとの7人が橘家富蔵(橘家舛蔵)、初音家左橘(金原亭小駒)、古今亭菊輔(古今亭菊正)、三遊亭吉窓、金原亭生駒(金原亭駒之助)、柳家一九(柳家小満女)、林家うん平、である。
こうした名前の並びを見るとき、自分がその時期に聴いているかどうかで興味の持ちようが変わる。朝太こと古今亭志ん輔と、扇好こと入船亭扇遊については、少なからず前のめりになるものが私にはあった。ずっと子どもの時分、まだ二ツ目だった二人が開いていた勉強会に行ったことがあるからである。
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