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2025年12月の最前線【後編】 (2025年の講談界ニュース)

「講談最前線」 第13回

2.神田愛山、CDに続いて本を刊行

 一昨年に古希を迎え、昨年は芸歴50年を記念するように、十八番である「寛政力士伝『谷風の情相撲』」と菊池寛原作の「敵討母子連れ」を収録したCD(ソニーミュージック)を送り出した“講談界の秘宝”(本人談)こと、神田愛山が半生記を刊行。その名もズバリ『神田愛山半生記 愛山取扱説明書』(田畑書店)。ちなみに小生が聴き手を担当した。

 書名通り、その半生をたっぷりと振り返るばかりでなく、柳家喬太郎との対談や50問にのぼるQ&A、さらに愛山が選んだ自選30席等々。講釈師が自身の半生を振り返る本が皆無に等しかった中、愛山の波乱の人生を描き出すばかりでなく、愛山が芸を磨いた講談史を振り返られる中身となった。未読の方はぜひご一読を!

『神田愛山半生記』(クリックするとAmazonに移動します)

3.講談協会新体制と宝井琴調鈴本主任興行

 講談協会は2023年に宝井琴調が会長、神田すみれが副会長に就任したが、その二期目の体制として、新たに神田香織が副会長に就いた。その香織が2024年に「澄和平和活動賞」を受賞したというのは、当Webのインタビューで紹介した通りであるが、協会は10月に一般社団法人として認可。今後の運営については講談の普及といったものも求められるだけに、若手の意見等を積極的に汲み上げつつ、益々の協会運営に期待したい。

講談協会副会長に就いた神田香織

 そして琴調は7月下席の鈴本演芸場で、恒例の「琴調の夏」と題して、今年は『天保六花撰』で主任を務め、12月中席でもトリを取るが、講談協会の若手真打や有望な二ツ目も高座に上がる。鈴本演芸場の前身は講釈場であり、年期の入った釈台が高座で待っているので、各演者がどんな風に張り扇の音を響かせるのかに注目したい。