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2025年12月の最前線【後編】 (2025年の講談界ニュース)

「講談最前線」 第13回

4.神田松鯉の歌舞伎座出演と愛弟子の映画&芝居出演

 これまた詳細は5月の最前線で取り上げたが、歌舞伎の世界に身を置いたことのある神田松鯉が、四月大歌舞伎『無筆の出世』(竹柴潤一・脚本、西森秀行・演出)に講釈師役として出演。『荒川十太夫』(2022年10月初演)、『俵星玄蕃』(2023年12月初演)に続く、講談シリーズの第三弾であったが、今年ブームを呼んだ映画『国宝』よろしく、歌舞伎座の檜舞台で講談界の人間国宝の高座が楽しめた。望むべくは講談には良作が多いので、今後の第四弾にも期待したいということだ。

四月大歌舞伎『無筆の出世』(2025年4月公演)のポスター

 また、愛弟子の神田松麻呂も2月に劇作家の横山拓也が自身の短編小説をもとに演出を手掛けた『ユアちゃんママとバウムクーヘン』に出演するも、2025年の後半は講談に没頭。12月には「神田松麻呂の日本縦断講談会~赤穂義士伝編~」と題して、札幌・帯広・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の8都市で公演。来年は2025年の経験をもとに、新たな神田松麻呂の活躍を楽しみにしたい。

 神田鯉花が落語家の春雨や晴太と結婚したのはまだ新しいニュースだが、今年は師匠や兄弟子と同様に、高座以外では『あて所に尋ねあたりません』という短編映画で主役を務め、いつもとは異なる神田鯉花の魅力を大画面を通して伝え得た。一方で、高座では今、果敢に挑んでいる『水戸黄門記』に『柳沢昇進録』といった、一門に伝わる連続物に確かな読みで取り組んでおり、これまた来年の充実した高座に注目していきたい。